Lotus78 History & Markings – Vol.13 1977 Rd.06 Monaco GP


今回は1977年モナコGP(5月22日決勝)におけるロータス78について取り上げます。序盤戦のトラブルと不運を乗り越えて第4戦USGPウェストと第5戦スペインGPを連勝し、今や最速マシンとの評価を固めつつあるロータス78は熟成もかなり進んだと思われ、モナコでは小幅なアップデートに留まります。

写真:1977年モナコGP決勝レース中盤、ヨッヘン・マスのマクラーレンM23を追うマリオ・アンドレッティのJPS17。後方はパトリック・デパイエのティレルP34。低速のロングビーチで見せた速さからこのモナコにも期待が掛かったアンドレッティだったが、今回は期待に反して終始中団に沈むも、最終的には5位入賞を果たす。(Motors TV


【FILE 28. 1977 Rd.06 MONACO GP – May.21.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年7月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
最初に紹介するのは、ロングビーチでスペアカーに格下げされて以来久し振りの紹介となるJPS15。正確なタイミングは不明ですが、恐らく土曜日のプラクティスで用いられたものと思われます。ウェットタイヤを装着し、路面はほぼドライながらも部分的にウェットパッチが見られます。アンドレッティはプラクティスで本来のレースカーであるJPS17をカジノ・スクエアのバリアにヒットさせ、修復後も引き続きセットアップに苦しんだ為、ロングホイールベース仕様であるJPS15でギャンブルに出ました。尚、このマシンにはコスワースがロータス、ティレル、マクラーレンにのみ供給した軽量化スペシャル・エンジン(詳細はA BOOKSHELFさんの参考資料参照)が搭載されていました。
外観はスペアカーらしく旧仕様のパーツが多く使われており、全体的に第3戦南アフリカGP頃の仕様にデグレードしています。楔形のフロントウィング翼端板、サイドウィングのアップスイープも平面タイプ、そして写真の鮮明度が足りない為確証はありませんが、リアウィングの翼端板も前面部分がやや丸みを帯びている様に見える事から初期型のタイプ、リアサスペンションのアンチロールバーも旧仕様と思われます。マーキング面で興味深いのは、フロントノーズのカーナンバー5の左上部分が丸みを帯びている事から、ニルソンのカーナンバー6(右上のカギ部分が折れ曲がっていないタイプ)の左下部分をテープで塞いで「5」に見せるという、この年のロータスがよくやった手を使ったものと思われます。コクピットカウルにはモナコ限定のPARK PALACE MONTE CARLOのロゴが加わっていますが、インダクションボックスのKONIロゴはありません。またスペアカーである事からロールバーはニルソン用の背の高い物を採用、ドライバー名は記入されていません。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、「6」の一部をテープで塞いで「5」に見せかけている
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は楔形タイプ
・コクピットカウルにPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ追加
・サイドウィングのアップスイープは平面タイプ
・右側サイドウィングのカーナンバー「5」はやや右側に傾斜している様に見える
 (確証が無い為イラストでは再現せず)
・ロールバーはニルソン用の背の高いタイプ
・ドライバー名なし
・インダクションボックスのKONIロゴなし
・リアウィング翼端板は初期型タイプ
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/04) 新規作成


【FILE 29. 1977 Rd.06 MONACO GP – May.19-22.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年7月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
グンナー・ニルソンのJPS16は、このモナコでフロントウィングの翼端板がモディファイされ、丁度舟の縦断面の様な形状の物に変更されました。何故アンドレッティの半月形と形状を区別したのかその理由は不明ですが、この形状は(若干の違いこそあれ)その後のJPS18にも採用され、更にJPS17も1978年にはこの形状に変更、そして翌年のロータス79にも採用されるという標準的なものとなります。それ以外の部分では、コクピットカウルのPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ以外はほぼ前戦スペインGPとほぼ同様の状態です。
モナコでのニルソンは、プラクティスから終始JPS16のアンダーステアに苦しめられますが、それでも何とか13位のグリッドを獲得します。しかしニルソンは決勝でも不運な事にギアボックスが不調になり、3度のピットインを行うものの修復はならず、51周目にリタイアとなりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れていないタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・コクピットカウルにPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/04) 新規作成


【FILE 30. 1977 Rd.06 MONACO GP – May.19.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
Model Factory Hiro刊 「Lotus 78,79&80」
こちらはこのページの冒頭でも紹介していますModel Factory Hiro刊 「Lotus 78,79&80」で1977年モナコGPでのページでトップを飾っているマリオ・アンドレッティのJPS17。キャプションでも紹介されていますが、コクピットカウルのPARK PALACE MONTE CARLOのロゴが記入されていない為、セッション初日の状態ではないかと推察されます。基本的に見た目は殆ど前戦スペインGP決勝時と変わりませんが、フロントノーズのカーナンバー5は、スペインでは「5」のカギ部分根元の部分をテープで塞いで水平にしていたものが、今回は正式なマーキングとして記入されています。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が水平になる様に変更
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・コクピットカウルのPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ無し
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/04) 新規作成


【FILE 31. 1977 Rd.06 MONACO GP – May.21-22.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年7月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが決勝でのJPS17の姿で、FILE.30では記入されていなかったコクピットカウルのPARK PALACE MONTE CARLOのロゴが記入された状態となっています。またフロントノーズのカーナンバーも同様に、「5」のカギ部分根元が水平になっているタイプです。
FILE.28でも記述しましたが、モナコでのアンドレッティとJPS17は期待に反して精彩を欠き、ニルソン同様にアンダーステアに苦しみ、プラクティスではカジノ・スクエアでバリアにヒットしてしまいます。マシンはすぐに修復されたものの不調は変わらずにスペアカーのJPS15を引っ張り出すなどしたものの、結局10番手スタートに沈みます。決勝では終始マクラーレンのヨッヘン・マスとのバトルを展開したアンドレッティは粘り強くレースを走り抜き、最終的に5位入賞という結果を得ました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が水平になる様に変更
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・コクピットカウルにPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/04) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


2 thoughts on “Lotus78 History & Markings – Vol.13 1977 Rd.06 Monaco GP”

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFです。
    ハント、ピーターソン、アンドレッティのマシンに搭載された最高出力2%増・重量9kg減の試作型DFVは全部で9基(うち2基はアルミブロック+マグネシウムヘッド/カムキャリア、他は総アルミ製でマグブロックのものは無い)が造られ、マクラーレン、ティレル、ロータスの各チームに3基ずつ渡されたとの記述がCAR GRAPHICにありました。
    またアンドレッティは有利さは感じつつもヒューランドFGA400-6をモナコでも試さなかったようです。
    ちなみに、PARK PALACE MONTE CARLOの追加ロゴはペイントではなくステッカーですね。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFさん
    今回も詳細な解説ありがとうございます。
    この頃からコスワースもフェラーリへの対抗を強く意識し始めた頃ですね。
    ヒューランド6速は確かにアドバンテージだったかもしれませんが、モナコだけに信頼性や
    シフト回数の違いから来るドライバーへの負担も考慮材料になった可能性がありますね。
    あと、PARK PALACE MONTE CARLOのロゴは確かにシート状の四角形が確認出来
    ますので、ステッカーですね。気になるのは角度によってJPSカラーとは若干違う色に
    見え事です。もしかしてゴールドなのかも?と思ったりもしています。
    今後も宜しくお願い致します。

A+BOOKSHELF へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


*