Lotus78 History & Markings – Vol.21 1977 Rd.14 Italian GP


今回は伝統のモンツァで行われた1977年第14戦イタリアGP(9月11日決勝)でのロータス78について取り上げます。モンツァは1994年にコース奥のレズモ・コーナーが若干改修され、そして2001年には多くのドラマの舞台となって来た第1シケインのレッティフィーロと第2シケインのロッジアが改修されましたが、それでもシルバーストーンやホッケンハイムと異なり、現在も比較的当時のレイアウトを多く残しており、世界屈指の高速サーキットという特性は変わっていません。この時代は例年このイタリアGPがヨーロッパでの最後のレースとなっており、この為各チームやドライバーはこのモンツァで来季の体制や移籍先を発表する場所でもありました。この1977年はタイトル獲得を目前にしていたニキ・ラウダがフェラーリを離脱、来季はブラバムへ移籍するというショッキングなニュースがレースウィーク直前に駆け巡り、イタリア中が騒然となります。そして観客席ではラウダに対しては歓声とブーイングが乱れ飛ぶ一方、サーキットの広告看板が観客がよじ登った為に倒壊して死亡者が出るなど、混乱した雰囲気の中で決勝レースが行われました。

写真:1977年イタリアGP決勝(LAP15/52頃)、ウルフのジョディ・シェクターをパスしてトップに立ち、シーズン4勝目へ向けてアスカリ・シケインを走行するマリオ・アンドレッティのJPS17。イタリア領に生まれ、移民としてイタリア各地を転々とし、15歳の時にアメリカへ移り住んだアンドレッティにとって、ロングビーチでの優勝に続くもう一つの母国優勝となった。FILE.60で説明する通り、スペアカーのJPS18用と思われるフロントノーズを使用しており、カーナンバーの書体とフロントウィングの形状が通常タイプと異なっている。(British Racing Green)


【FILE 58. 1977 Rd.14 ITALIAN GP – September.9-11.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年11月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
前回オランダGPではスペアカーのJPS18をレースで使用したニルソンでしたが、このイタリアGPでは通常通りJPS16をレースカーとして使用しました。外見上の仕様としてはオーストリアGP時とほぼ同一の仕様で、高速サーキットであるモンツァ用に低ドラッグのウィングエレメントを使用している以外、外見上の相違点は見受けられません。
ニルソンはこのイタリアでは全くの不調で、金曜日は固めのサスペンションセッティングをトライしたのが完全に裏目に出てハンドリング不調に苦しみます。それでも土曜日にはタイムを2秒近く更新したものの逆にポジションはダウンして結局19位という今シーズン最低の予選結果に沈みました。その土曜日にはラウダが最終パラボリカ・コーナーでニルソンをアウトからパス、手を振って走り去ったもののスピンしてクラッシュ、その後現場を通りかかったニルソンはラウダに手を振り返すというハプニングもありました。しかしレースでもニルソンは全く良い所無く、僅か5周目にルノーのジャン-ピエール・ジャブイーユと接触、サスペンションを壊してリタイアとなりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/04/09) 新規作成


【FILE 59. 1977 Rd.14 ITALIAN GP – September.9-11.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年11月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
このイタリアでもマリオ・アンドレッティのレースカーとなったJPS17で、日曜日の決勝直前までの姿です。JPS16と同じくリアウィングのエレメントが高速サーキット用になっている以外はほぼ前戦オランダGPと同一ですが、モノコック右側のキルスイッチ現示位置マークがこのレースでは貼付されていない(以前の「E」マークも無し)のが注意点です。
イギリスGP以来度重なるエンジンブローに苦しめられているチーム・ロータスは、このイタリアGPのプラクティスではアンドレッティ、ニルソン共にノーマル仕様、470馬力のDFVを使用します。しかしそれにも拘わらずアンドレッティのJPS17は好調で、プラクティスをトラブルフリーでこなして予選3位を獲得しました。レースでは同じJPS17が使用されますが、フロントノーズが交換されてFILE.60の姿となって決勝を走ります。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・右側キルスイッチのマーク無し
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/04/09) 新規作成


【FILE 60. 1977 Rd.14 ITALIAN GP – September.11.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年11月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが9月11日の決勝を走ったJPS17の姿。決勝に向けてコースインする際にはFILE.59で紹介した通常のJPS17と同じカーナンバーとフロントウィング翼端板の形状であった事が確認出来ていますが、決勝スタート迄の間に何らかの理由でフロントノーズをスペアカーであるJPS18の物と交換したものと思われ、フロントノーズ上のカーナンバーが通常両サイドウィングに使用されている書体が用いられています。またイラストでは再現していませんが、決勝走行時にはカーナンバー5の上部に何やらカウルの稜線に沿った白い模様が見られます。詳細は不明ですがグリッド上での写真ではこの模様は見られない為これはマーキングの類ではなく、恐らくフロントノーズ交換時にノーズとコクピットカウルの隙間を埋める為のテーピングが走行風で一部剥がれ、白い糊面が露出したのではないかと想像されます。
アンドレッティはレースではコスワースのスペシャルDFVを使用する事になりますが、エンジンブローの連続という事態を受けてアンドレッティがフェラーリに移籍するという噂が流れる中、コスワースもこのレースに向けてエンジンをモディファイして臨みました。アンドレッティは予選4位スタートだったウルフのジョディ・シェクターと予選8位からロケットスタートを決めたエンサインのクレイ・レガツォーニに抜かれたものの、ポールポジションだったフェラーリのカルロス・ロイテマンをパスして4位に着け、2周目にマクラーレンのジェームス・ハントをパス、更にレガツォーニもパスして2位に浮上すると、トップを走るシェクターの後を追います。アンドレッティは落ち着いてシェクターを追い詰めると10周目のパラボリカ・コーナーでアウトからパス、トップに浮上します。その後24周目にシェクターがエンジンブローでリタイアすると独走状態となり、更にラウダが2位に浮上した事で、モンツァはタイトルに王手を掛けたラウダへの声援と、そして来季アンドレッティのフェラーリ入りを期待する観衆の大歓声に包まれます。アンドレッティはトップに浮上した後はひたすらエンジンを労わった走りを心がけたものの、結局ラウダに17秒の大差を付けて優勝、今季4勝目を挙げました。
モンツァで声援を送ったイタリアの観客の期待に反し、アンドレッティはチーム・ロータスとの契約延長に気持が傾きましたが、唯一の懸念は既にシャドウとサインを交わしたニルソンの後任にロニー・ピーターソンが就く可能性が高まっている状況の中、2人のトップドライバーをチームがサポート出来るのかという疑問でした。しかしアンドレッティをチームに不可欠の存在であると考えたボスのコーリン・チャップマンは、アンドレッティに対して来季のエースドライバーのポジションとサポートを確約し、これによってアンドレッティは最終的にチーム・ロータスとの契約延長を決断する事になりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、サイドに用いられているのと同じ書体
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・右側キルスイッチのマーク無し
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/04/09) 新規作成


【FILE 61. 1977 Rd.14 ITALIAN GP – September.9-10.1977】 v1.0
JPS18(78/4) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年11月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらはアンドレッティがプラクティスで使用したスペアカーのJPS18。このイタリアではロールバーがニルソン用の背の高いタイプに変更されました。前戦オランダGPからまたもフロントノーズのカーナンバーの書体が変更を受けており、今度はサイドに使用されたものと同じ書体が用いられています。ドライバー名は記入されていません。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、サイドに用いられているのと同じ書体
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/04/09) 新規作成


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