Lotus78 History & Markings – Vol.29 1978 Rd.4 U.S.GP West


今回は1978年4月2日に決勝が行われた第4戦USGPウェストでのロータス78について紹介します。レイアウトは変更されているものの現在でも毎年インディーカー・シリーズのレースが開催されているカリフォルニア州ロングビーチ市街地サーキットは、さしずめヨーロッパのモナコに対抗すべく、ハーバーには超豪華客船クイーン・メリー号が停泊し、そして空から照りつけるカリフォルニアの太陽が風光明媚な空気を醸し出していました。しかしサーキットは対照的にアメリカのストリートコースらしくバンピーな路面、ランオフエリアの無いコンクリートウォール、ツイスティなブラインドコーナーとタイトなヘアピン、そして最高速度270km/hに達する長いストレートを持つ過酷な物した。前年の同GPでマリオ・アンドレッティのドライブによりグラウンドエフェクトカーによる初勝利を挙げたロータス78にとって、トラクションの良さが活きるストップ&ゴータイプのストリートコース、そして何よりドライバーのアンドレッティ、DFVエンジンにその名を冠するフォード、そしてタイヤを供給するグッドイヤーの3者にとっての地元であるアメリカでのレースは必勝レースと位置付けられましたが、しかしその結果は厳しいものとなりました。

写真:1978年USGPウェスト決勝(LAP74/80)、トップを走行するフェラーリのカルロス・ロイテマンに14秒もの大差を付けられ、2位を単独走行するマリオ・アンドレッティのJPS17。何れも地元アメリカのレースという事で必勝を期したアンドレッティ/フォード/グッドイヤーのパッケージだったが、対抗するフェラーリ/ミシュラン陣営に終始全く刃が立たず、結果こそ2位を得たものの内容的には完敗を喫したレースだった。(ZDF


【FILE 83. 1978 Rd.4 U.S.GP WEST – Mar.31-Apr.2 1978】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Ronnie Peterson


参考資料:
・AutoSport 1978年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
いつも通り最初に紹介するのは、ロニー・ピーターソンのレースカーJPS16。前戦南アフリカGPのキャラミ、及びインターナショナル・トロフィーのシルバーストーンと高速サーキットでのレースが続きましたが、今回は低速ストリート・サーキットのロングビーチでの開催と言う事で、リアウィングに追加フラップが装備されています。しかし前年の同GPと比較してそのフラップの面積、仰角共に格段に小さくなっており、この1年の間のサイドスカートの進歩によりグラウンドエフェクトによるダウンフォースが格段に大きくなった事を物語っています。またFILE.84で後述しますが、同GP中の写真でアンドレッティのJPS17及びスペアカーのJPS18にウィニング・ローレルが描かれているのが確認出来ます。ピーターソンのマシンはその有無が確認出来る写真が無い為に不明ですが、一応記入された状態としておきます。この他のマーキング上の特徴として、ポーラー・キャラバンのホッキョクグマのロゴは左右両サイド共にドライバー名の右側に移動し、頭は左サイドがフロント向き、右サイドはリア向きとなっており、更に右サイドのキルスイッチ位置現示マークが復活していますが、デザインは三角形内部に書かれている稲妻の白縁が無くなっています。両ラジエーターアウトレットのフィンは装備されていますが、フロントノーズのオイルクーラーのエアインテークにはフィンは装備されていません。またこのレースでもピーターソンはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用していますが、以後のレースでは(ロータス79投入後も)ピーターソンは基本的にニコルソンを使用する事が多くなった模様です。
1978年のシーズン開幕以来ここまでのレースで、ピーターソンはプラクティスにてロータス/ゲトラグ製のギアボックスを装着してセッションに臨んでいましたが、前回のシルバーストーンでのレースを最後にチーム・ロータスは一旦このギアボックスのデベロップメントを中断する事を決定します。この為ピーターソンは初日からヒューランド製ギアボックスでレースウィークに臨みましたが、このロングビーチでは終始不調に苦しみます。まずは初日にエンジンがブロー、さらにその後はグッドイヤーがロータス、マクラーレン、ブラバムの3チームにのみ供給したスペシャルタイヤとのマッチングが悪くハンドリング不調に苦しみ、結局ピーターソンはポールポジションを獲得したフェラーリのカルロス・ロイテマンからコンマ8秒遅れの予選6位に終わりました。レースでもピーターソンは精彩を欠き、スタートでウィリアムズのアラン・ジョーンズとマクラーレンのジェームス・ハントにパスされて1周目で8位に後退します。その後6周目にハントが最終コーナーでウォールにヒット、10周目には2位を走行していたブラバムのジョン・ワトソンがギアボックスのトラブルでリタイアした為に6位にまで順位を戻しますが、しかし依然としてタイヤのグリップ不足に悩まされたピーターソンは28周目にピットイン、タイヤ交換を余儀なくされます。しかし同じ周に2位を走行していたブラバムのニキ・ラウダが、38周目にトップを快走していたフェラーリのジル・ヴィルヌーヴが脱落、そして終盤には激しくロイテマンをプッシュしていたジョーンズがトラブルで後退した事にも助けられたものの、予選12位から追い上げを見せたティレルのパトリック・デパイエにパスされたピーターソンは、終始見せ場の無かったレースを結局4位でフィニッシュする事になりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加
・右側キルスイッチ位置現示マークあり
・リアウィングに追加フラップあり
・リアウィングにウィニング・ローレル2個(推定:アルゼンチン、南アフリカGP)
・コクピット前方のロールフープを大型化
・ポーラー・キャラバンのロゴはモノコックのドライバー名右側に記入(左はフロント側、右はリア側が頭)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴはカムカバー後上方に記入


<改訂履歴>
・v1.0(2012/11/14) 新規作成


【FILE 84. 1978 Rd.4 U.S.GP WEST – Mar.31-Apr.2 1978】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1978年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
マリオ・アンドレッティのJPS17も基本的にはJPS16と同様の仕様で、前戦南アフリカGPからの相違点はリアウィングが中心になっており、追加フラップによりリアウィングが増積されています。尚、1978年シーズンに入ってここまでリアウィングのウィニング・ローレルは記入されていませんでしたが、このロングビーチではこの年の開幕戦アルゼンチンGP、そして第3戦南アフリカGPでの優勝を示すウィニング・ローレルが新たに記入されました。デザインは基本的に前年と同一で、円状にあしらわれた月桂樹の内部に、上段に「Winner」、中段に「1978 GrendPrix」、下段にGP名が記入されています。このデザインの詳細はまた機会を改めて紹する予定ですが、後にロータス79に記入される物とはデザインが異なっているのが注意点です。また、アンドレッティはこのレースでもコスワースのスペシャルDFVを使用しており、次第にニコルソンを使用するピーターソンとの棲み分けがされる様になって行きます。
冒頭に述べた通り、前年のロングビーチの覇者であり、かつ現在ポイントリーダー、そして何より母国レースとなるアンドレッティは優勝争いの最有力候補と見られていましたが、期待とは裏腹にレースウィークを通じて不調に苦しむ事になります。主な原因となったのは皮肉にもアンドレッティ同様に地元優勝に意気込むグッドイヤーがロータス、ブラバム、マクラーレンにのみ供給したスペシャルタイヤとのマッチングで、アンドッティは終始リアのグリップ不足に苦しみ、リアタイヤを削って発熱を改善させる等の苦労を強いられました。更にエンジンブローにも見舞われてスペアカーのJPS18に乗り換えるなど終始精彩を欠いたアンドレッティはカルロス・ロイテマンとジル・ヴィルヌーヴのフェラーリ/ミシュラン陣営にフロントロー独占を許しただけでなく、ブラバムのニキ・ラウダにも先行され予選4位という結果に終わりました。更にレースではチョイスした9.5インチ幅のナローフロントタイヤ、そして短いトップギアが何れも裏目に出てアンダーステアとトップスピード不足に苦しみます。スタートではダッシュを決めたブラバムのジョン・ワトソンにパスされて5位に後退、10周目にそのワトソンが脱落して4位に復帰しますが、18周目には8位スタートからグッドイヤーのノーマルタイヤで快走するウィリアムズのアラン・ジョーンズにパスされる屈辱を味わい、再び5位に後退します。その後もアンドレッティは彼自身をして「78に乗って以来最悪」と言わせたハンドリング不良に耐え、我慢の走行を続けました。そして28周目にラウダが脱落、39周目にはトップを快走していたヴィルヌーヴがバックマーカーのオーバーテイクに失敗してクラッシュすると、アンドレッティはトップを争うロイテマンとジョーンズのバトルに大きく遅れて3位を単独走行する事になります。レース終盤にジョーンズのマシンにフロントウィングの破損と燃料供給系にトラブル発生するとアンドレッテは労せずして2位に順位を上げますが、最終的にロイテマンに11秒の大差を付けられ、そのままフィニッシュとなりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加
・右側キルスイッチ位置現示マークあり
・リアウィングに追加フラップあり
・リアウィングにウィニング・ローレル2個(アルゼンチン、南アフリカGP)
・コクピット前方のロールフープを大型化


<改訂履歴>
・v1.0(2012/11/15) 新規作成


【FILE 85. 1978 Rd.4 U.S.GP WEST – Mar.31 1978】 v1.0
JPS18(78/4) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1978年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらはプラクティス中にマリオ・アンドレッティが使用したJPS18の姿。外観上の最大の特徴として、ロールバーに以前紹介した通り、グンナー・ニルソン用の物と思われる背の高い物が使用されている事です。この他コクピット前方のロールフープはJPS16及びJPS17に準じて大型化されていますが、両ラジエーターアウトレット前面のフィンはありません。マーキングはほぼJPS17と同じ仕様で、これまでスペアカーではしばしば記入される事の無かったコクピット両脇のドライバー名、及びインダクションボックス両側のKONIロゴは記入された状態になっています。またJPS17同様にリアウィング上面のウィニング・ローレルも確認出来ます。
ロングビーチでのJPS18はアンドレッティが金曜日にレースカーであるJPS17のエンジンがブローした際に使用しましたが、これがチーム・ロータスにおけるJPS18最後の姿でした。次戦モナコからはロータス79が投入される様になり、JPS18はJPS15と同様にヘクター・レバークに譲渡され、使用される事になりました。

<外観上の特徴>
・ロールバーはグンナー・ニルソン用の背の高いタイプ
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側キルスイッチ位置現示マークあり
・リアウィングに追加フラップあり
・リアウィングにウィニング・ローレル2個(アルゼンチン、南アフリカGP)
・コクピット前方のロールフープを大型化


<改訂履歴>
・v1.0(2012/11/15) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

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