Lotus78 History & Markings – Vol.9 1977 Rd.03 South African GP


今回は1977年第3戦南アフリカGP(3月5日決勝)でのロータス78について紹介します。1月の南半球2連戦で、度重なるアクシデントに見舞われながらも78のポテンシャルを確信したチーム・ロータスは、約1ヶ月半のインターバルでマシンに大幅なアップデートを加え、直前のキャラミ・テストを経てレースウィークへと臨みました。尚、このテスト期間中でのマリオ・アンドレッティによるJPS16(ロールバー上方にピトー管を装備)の写真が数枚確認出来ますが、全体像が不明な為にここでは割愛とさせて頂きます。またTiplerの本によると、3号車(JPS17)が完成してキャラミへ持ち込まれたものの使用されなかった、との記述があるものの、裏付けに乏しい為にここでは疑問を呈しておきます。

写真:1977年南アフリカGP決勝(LAP17/78)、ホームストレートでトム・プライスのシャドウDN8に並ぶ間もなくパスされるグンナー・ニルソンのJPS15。ニルソンはエンジンの不調によりストレートスピードの不足に苦しんでいた。
そしてこの僅か8分後のLAP23、そのプライスは突然のアクシデントで凄惨な事故死を遂げ、ニルソンは後方でその一部始終を目撃してしまう。(ZDF


【FILE 17. 1977 Rd.03 SOUTH AFRICAN GP – Mar.03-05.1977】 v1.2
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年5月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
まずはニルソンのJPS15から。前戦ブラジルGPから、特に空力面を中心に大幅なアップデートが施され、シーズン通じての標準的な形に近付いています。まず目立つのはインダクション・ボックスが大型化され、全体がドライバーのヘルメットを覆う高さまで高くなっています。吸気口もラム圧の高い空気を取り入れる為に高い場所へ移動しました。次にサイドウィングではラジエーターのエアアウトレット前面にフィンが追加されました。尚、このフィンは結局1977年には再度採用される事はありませんでしたが、1978年の南アフリカGPで復活、以後標準装備となります。更に後端のアップスイープも変更され、上面は平面ながら角度が3~4段階に変更可能となっています。またブラジルGPではアップスイープ面にあったリアブレーキ冷却用のNACAダクトを廃止してベンチュリー空間を確保し、ダクトはエンジンのカムカバー後方へと移動しています。更にスカートはブラシ式から「Suck-Up」と呼ばれるポリエチレン製のプレートを内側へと折り曲げた方式に変更されて軽量化とベンチュリー効果の向上を図り、更にマシン下面にはボルテックス・ジェネレーターが追加されました。またマーキングも変更されて各ロゴの記載位置が変更されています。
このマシンで予選10位を獲得したニルソンでしたが、決勝ではスタートからエンジンが不調に陥ってストレートで1万200回転しか回らず、およそ600回転はロスしていた状態での走行を強いられ、じりじりと順位を落とします。そして23周目のホームストレートで、ニルソンの前を走っていたシャドウのトム・プライスが消火器を持ってコースを横断して来たマーシャルと接触して共に死亡するアクシデントが発生、ニルソンは事故の破片でフロントノーズと両リアのタイヤにダメージを受けたものの、事故によるピットロードの混乱でピットイン出来ず、更に後退してしまいます。その後結局タイヤ交換を終えてレースに復帰したものの、ニルソンは事故を目撃してしまったショックとその後の混乱により既に戦意を喪失しており、1周遅れの12位で完走するのが最大限の結果でした。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がった仕様で、以後主にレースカーで使用される。
・フロントウィング上面のValvolineロゴの記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・コクピットカウルのJohn Player Specialの文字が後方に移動。
・サイドウィングはアップスイープ付き、上面は平面タイプ。
・サイドウィング側面のマーキング変更。JPSロゴが消え、前方からJohn Player Specialの文字、ユニオンジャック、カーナンバーの順でそれぞれサイズを拡大。
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・サイドスカートはSuck-Upタイプへ変更。
・モノコック最後部のNGKロゴは四角形タイプに変更。
・インダクションボックスが大型化される。
・リアウィング上面のJohn Player Special文字の記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/11) 新規作成
・v1.1(2011/9/13) 出典に関する誤記訂正
・v1.2(2011/10/12) ラジエーターエアアウトレットのフィン、及びこれに関する記述を追加


【FILE 18. 1977 Rd.03 SOUTH AFRICAN GP – Mar.03-05.1977】 v1.2
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年5月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
マリオ・アンドレッティのJPS16にもニルソンのJPS15と同様のアップデートが施されますが、こちらは更にフロントとリアの両ウィングにも変化が見られました。
フロントウィングは翼端板が変更され、空気抵抗の減少を狙ってか最小限の面積に抑えた半月形の形状になっています。この翼端板はその後のシーズンにおいてアンドレッティのレースカーで標準的に使用されました。一方リアウィングはこのレースのみで用いられた独特の仕様で、ウィング本体は当時のロータスとしては異例となるメインエレメントとフラップが分離した2枚タイプ、そして翼端板も大型化されたものとなっています。恐らくストレートの長い高速サーキットであるキャラミで、ニルソンは従来型のローダウンフォース仕様、アンドレッティはハイダウンフォース仕様としてそれぞれの違いを比較したか、ドライバーの好みが反映されたものと想像されますが、結局このウィングがその後再度採用される事はありませんでした。
このレースでもアンドレッティは不運が続き、高地対策のミスからなのか、プラクティスからエンジンを2基立て続けに壊してセットアップが進まず、彼にとっては不満の残る予選6位という結果に終わります。そしてレースでもトップスピードの不足から先頭集団のペースについて行けず、ブラバムのジョン・ワトソン、フェラーリのカルロス・ロイテマンといった12気筒勢にパスされて8番手に後退します。コーナーで詰めてはストレートで離されるという繰り返しにフラストレーションが溜まったアンドレッティは結局44周目、コース中盤のクラブハウス・コーナーでロイテマンに強引にオーバーテイクを仕掛けてフェラーリのリアホイールに接触、フロントサスペンションを壊してリタイアとなってしまいました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、開幕戦アルゼンチンGPで使用されたカギ部分が丸いタイプに戻る。
・フロントウィング翼端板は半月形タイプへ変更。
・フロントウィング上面のValvolineロゴの記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・コクピットカウルのJohn Player Specialの文字が後方に移動。
・サイドウィングはアップスイープ付き、上面は平面タイプ。
・サイドウィング側面のマーキング変更。JPSロゴが消え、前方からJohn Player Specialの文字、ユニオンジャック、カーナンバーの順でそれぞれサイズを拡大。
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・サイドスカートはSuck-Upタイプへ変更。
・モノコック最後部のNGKロゴは四角形タイプに変更。
・インダクションボックスが大型化される。
・リアウィング本体はこのレースのみで使用されたメインエレメントとフラップが分離した2枚タイプ。中央部にサポート用のヒンジ有り。
・リアウィング上面のJohn Player Special文字の記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・リアウィング翼端板も、このレースのみで使用された大型タイプ。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/11) 新規作成
・v1.1(2011/9/13) 出典に関する誤記訂正
・v1.2(2011/10/12) ラジエーターエアアウトレットのフィン、及びこれに関する記述を追加


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.8 1977 Rd.02 Brazilian GP 2


今回は前回に引き続き、1977年第2戦ブラジルGPでのロータス78の姿を紹介します。

写真:1977年ブラジルGP決勝(LAP20/40)、電気系トラブル(イグニッション)によりリタイヤしたアンドレッティのJPS16。ニルソンのJPS15とは異なり、サイドウィング後端にアップスイープがあるのが判る。(ZDF


【FILE 14. Rd.02 BRAZILIAN – Jan.21-23.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
まずはニルソンのJPS15にアップスイープ付きサイドウィングを装備した姿。恐らくサイドウィングによるより大きなダウンフォースの獲得とリアタイヤへの空気の整流を考慮したものと思われます。アップスイープ面は曲面となっていて、これまでサイド側に装備されていたリアブレーキ冷却用のNACAダクトがこのアップスイープ面に移動しています。前回紹介しましたがニルソンは結局、決勝ではこのタイプのサイドウィングは使用せず、従来のフラットなタイプを使用しました。

<外観上の特徴>
・アップスイープ付きのサイドウィング装備。
・フロントノーズのカーナンバーはサイドに使用されているのと同様の角張ったタイプ。
・コクピットカウル前端にNACAダクト装備。
・前戦ではNACAダクトを急造した為に干渉していたユニオンジャックの記入位置が後方に移動。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/8/17) 新規作成


【FILE 15. Rd.02 BRAZILIAN – Jan.21-22.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
同様のタイプのサイドウィングはアンドレッティのJPS16にも装備されました(この姿はF1 Modeling誌No.20でも紹介されているので、ご存知の方も多いと思いますが、キャプションに開幕戦アルゼンチンGPと記載されているのは誤り)。またこのサイドウィングは従来のフラットなタイプの後部を切断して取り付けたものと思われ、外部リンクでの写真を見ると、カーナンバー部分に切断線が見られます。また、前回紹介した通り、土曜の最終セッションで火災に見舞われた際にはフラットなタイプを装備しており、またニルソンのJPS15と共に2台でアップスイープ付きになっている写真もあり、結局のところどのマシンがいつ、どちらのタイプを使用していたかは正確には判らない状態です。また前回A BOOKSHELFさんからのコメントにもありましたが、コクピットカウルに装備されたNACAダクトはJPS15ではNACAダクト周囲に固定用と思われるボルト(orリベット)が5個見られますが、このJPS16では一体成型にされたのか、その跡は見られません。

<外観上の特徴>
・アップスイープ付きのサイドウィング装備。
・フロントノーズのカーナンバーはサイドに使用されているのと同様の角張ったタイプ。
・JPS15と同様、コクピットカウルにNACAダクト装備、ユニオンジャックの記入位置変更。
・JPS15と比較して、サイドポンツーンのJPSロゴが僅かに前方に移動している。
・JPSロゴが前方に移動した分、John Player Specialの文字に大きなスペースを割いている。
・ブラシスカートの部分はJPS15同様、ブラシスカート上端部分にアルミ製?のガイドレール追加。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/8/17) 新規作成


【FILE 16. Rd.02 BRAZILIAN – Jan.22.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが決勝でのJPS16の姿。上のFILE.15とほぼ一緒ですが、何故かコクピットカウルのユニオンジャックが消えています。
前日の炎上事故により消火剤まみれとなったJPS16ですが、メカニックの徹夜作業により日曜日にはほぼ完全に修復され、決勝レースに臨みました。予選3番手からスタートしたアンドレッティは、終始先頭集団の激しいバトルに割って入る健闘を見せますが、ジェームス・ハント(マクラーレン)、カルロス・ロイテマン(フェラーリ)に続く3番手走行中の20周目に、バッテリーターミナルの腐食(前日の炎上事故による消火剤が原因といわれている)によりイグニッションにトラブルが発生、リタイヤを喫しています。

<外観上の特徴>
・アップスイープ付きのサイドウィング装備。
・フロントノーズのカーナンバーはサイドに使用されているのと同様の角張ったタイプ。
・JPS15と同様、コクピットカウルにNACAダクト装備、ユニオンジャック無し。
・JPS15と比較して、サイドポンツーンのJPSロゴが僅かに前方に移動している。
・JPSロゴが前方に移動した分、John Player Specialの文字に大きなスペースを割いている。
・ブラシスカートの部分はJPS15同様、ブラシスカート上端部分にアルミ製?のガイドレール追加。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/8/17) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.7 1977 Rd.02 Brazilian GP 1


今回と次回はアルゼンチンGPから2週間後の1977年1月23日に決勝が行われた第2戦ブラジルGPでのロータス78の姿を2回に分けて紹介します。遠いブラジルまでのフライアウェイにもかかわらず、チーム・ロータスはサイドウィングにモディファイを加えたバージョンを持ち込みますが、今回はそのモディファイ前の状態を紹介します。

写真:1977年ブラジルGP決勝(LAP30/40頃)、ピットにて給油とフロントタイヤの交換を行うグンナー・ニルソンのJPS15。サイドウィングはアップスイープの無いフラットなタイプ。左回りのインテルラゴスに合わせ、イン側となる左側の燃料タンクに給油しているのが判る。(ZDF


【FILE 12. 1977 Rd.02 BRAZILIAN GP – Jan.21-23.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
まずは前戦アルゼンチンGPでマリオ・アンドレッティのドライブにより5位入賞を果たしたJPS15。ここブラジルではグンナー・ニルソンの元に戻って走る事になり、ニルソンはこの仕様で決勝に臨みました。特徴として、フロントノーズ先端に小型のフィンが追加されています。目的は恐らくノーズ下面の気流を剥ぎ取り、ピッチングの際の空力変化のシビアさを解消する効果を狙ったものと想像されます。しかしこのレースでは決勝時に装備されていた事はは確認出来ますが、それ以外のセッションではJPS16を含めて装備されていなかった様です。その他は前戦とほぼ同じ状態です。
予選10位からスタートしたニルソンはオープニングラップでティレルのパトリック・デパイエと接触してリアタイヤがバースト、ピットインを余儀なくされていきなり最後尾に転落します。しかし他車のクラッシュやリタイヤが相次ぐ中、粘り強く走り続けたニルソンは次第に順位を上げ、途中給油(※)とフロントタイヤの交換の為に再度ピットインしたものの、1周遅れの5位入賞(完走7台)を果たしました。
※ニルソンのJPS15は後述するJPS16の火災事故により、右サイドウィング内の燃料タンク(ガスバッグ)を引き抜いてJPS16に移植していた為に、燃料タンクのキャパシティが最初から足りず、途中給油は予定通り。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバーはサイドに使用されているのと同様の角張ったタイプ。
・コクピットカウル前端にNACAダクト装備。
・前戦ではNACAダクトを急造した為に干渉していたユニオンジャックの記入位置が後方に移動。
・ブラシスカート前端の板が黒に変更。尚、決勝レース中右側のものはダメージで失われた模様。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/8/7) 新規作成


【FILE 13. 1977 Rd.02 BRAZILIAN GP – Jan.21-22.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
前戦アルゼンチンGPの初日に消火器の爆発によりモノコックにダメージを受けたJPS16は、その日の内にチーフデザイナーのトニー・サウスゲートが手荷物としてイギリスへ持ち帰り、修復を受けてこのブラジルGPに臨みました。しかしブラジルでも不運は続き、土曜日のセッションでアンドレッティは予選3位のタイムをマークしながらも、終盤にインフィールド区間を走行中に燃料漏れにより火災に見舞われます。アンドレッティは炎に包まれたマシンをスローダウンさせると、停止するのを待たずにマシンから飛び出して無事でしたが、マシンはその後オフィシャルによって消火剤まみれの真っ白な姿となり、ガレージへと戻されました。チーム・ロータスのスタッフは徹夜で消火剤の除去とマシンの修復を行い、ニルソンの2レース連続出走中止という事態は回避されました。

<外観上の特徴>。
・フロントノーズのカーナンバーはサイドに使用されているのと同様の角張ったタイプ。
・JPS15と同様、コクピットカウルにNACAダクト装備、ユニオンジャックの記入位置変更。
・JPS15と比較して、サイドポンツーンのJPSロゴが僅かに前方に移動している。
・JPSロゴが前方に移動した分、John Player Specialの文字に大きなスペースを割いている。
・ブラシスカートの部分はJPS15同様、ブラシスカート上端部分にアルミ製?のガイドレール追加。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/8/7) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.6 1977 Rd.01 Argentine GP 2


今回は前回に引き続き1977年開幕戦のアルゼンチンGPに出場したマシンになります。

写真:1977年開幕戦アルゼンチン初日、下半角の付いたフロントウィングを装備したJPS16で走行するマリオ・アンドレッティ。その後このマシンはフロントノーズ内部に格納された消火器が暑さの為に爆発、この爆発音により折からサーキット内でテロや暴動を警戒していた武装兵士が爆弾テロと勘違いして出動し、一時サーキットが騒然となる騒ぎとなった。(A BOOKSHELF


【FILE 10. 1977 Rd.01 ARGENTINE GP – Jan.7.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

前回のA BOOKSHELFさんからの投稿にもありますが、アルゼンチンGP初日の金曜日、下半角の付いたフロントウィングをマリオ・アンドレッティがトライしています(外部リンク参照)。
尚、このJPS16は金曜午後のセッション終盤、ホームストレート通過直後にフロントノーズ内部に搭載した消火器が猛暑の為に爆発するというアクシデントに見舞われます。アンドレッティは辛うじて失神を免れ、クラッシュは回避しましたが、フロントノーズは勿論、モノコック前端のバルクヘッドまでが完全に吹き飛んでしまうというダメージを受けました。これによりJPS16は現場での修復は不可能と判断され、2週間後に迫っている次戦ブラジルGPに備える為、急遽チーフデザイナーのトニー・サウスゲートがモノコックを手荷物扱いでイギリスへ持ち帰る事になりました。

<外観上の特徴>
・フロントウィングに下半角が付いている。この為翼端板の取付位置も低い。
・フロントノーズのカーナンバー5の書体が、サイドに使用されている物を同様の形状。
・JPS15と比較して、サイドポンツーンのJPSロゴが僅かに前方に移動している。
・JPSロゴが前方に移動した分、John Player Specialの文字に大きなスペースを割いている。
・コクピットカウル前端のNACAダクトは未装備。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/7/28) 新規作成


【FILE 11. 1977 Rd.01 ARGENTINE GP – Jan.8-9.1977】 v1.1
JPS15(78/1) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
JPS16のアクシデントにより、開幕戦でTカーが無いチーム・ロータスは土曜日以降はグンナー・ニルソンのレースカーであるJPS15をアンドレッティに承継させる事を決定、ニルソンは土曜日以降の出走をキャンセルする事になりました。
アンドレッティはこのマシンで予選8位を獲得、レースでもブラバムのジョン・ワトソン、マクラーレンのジェームス・ハント、フェラーリのニキ・ラウダらと上位争いを展開、中盤には3位まで上昇しますが、周回遅れのアレックス・リベイロのマーチと接触、左フロントウィングにダメージを受けて後退します。しかし相次ぐ上位陣の脱落により終盤には2位にまで上昇しますが、残り2周となった52周目にリアのホイールベアリングが焼き付きを起こしてストップ、2周遅れの5位完走扱いとなり、まずまずのシーズンスタートを切りました。

<外観上の特徴>
・ドライバー名はAndrettiに書き換えられている。
・コクピットカウルはJPS16でも使われた、前端のユニオンジャック部分にNACAダクトが有るタイプ。
・サイドのカーナンバーは「6」の一部を黒いテープで塞ぎ、「5」に見せかけている。
・右サイドポンツーン上部のJPSストライプが一部欠けている(これもテープか)。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/7/28) 新規作成
・v1.1(2011/8/4) <外観上の特徴>に関する誤記削除


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.5 1977 Rd.01 Argentine GP 1


1977年年明け早々、ロータス78は1977年開幕戦のアルゼンチンGPに臨みます。今回はそのうち初日である1月7日(金)のロータス78の姿を紹介します。

写真:1977年1月7日、F1シーズンが幕を開けた開幕戦アルゼンチンGP初日にJPS15を駆るグンナー・ニルソン。ニルソンはこの日の午後に発生したマリオ・アンドレッティのレースカーJPS16の爆発事故によりJPS15をアンドレッティに明け渡す事になり、同GPでの走行はこの日のみとなった。(A BOOKSHELF


【FILE 08. 1977 Rd.01 ARGENTINE GP – Jan.7.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
これまで紹介して来た1号車(JPS15)は、グンナー・ニルソンのレースカーとして割り当てられます。先の1976年12月21日のプレス発表の状態から、ロールバーやブラシスカートに幾らかのモディファイが見られました。
尚、このJPS15でニルソンは初日に8位(最終的には予選10位)のタイムを記録したものの、次回後述するマリオ・アンドレッティ車(JPS16)の爆発事故により、開幕戦でTカーが無かった為にJPS15は土曜日以降はアンドレッティが承継する事になり、ニルソンは土曜日以降の出走をキャンセルしています。

<外観上の特徴>
・ロールバーは背の高いニルソンに合わせ、背の高い物へ変更。
・ブラシスカートは前方部分がやや切り詰められ、先端にアルミ製?の板が追加される。
・それ以後のブラシスカート上端部分には、これもアルミ製?のガイドレールが後端まで続く(絵では判りにくいですが)。
・マーキングはプレス発表時から変更なし。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/7/12) 新規作成


【FILE 09. 1977 Rd.01 ARGENTINE GP – Jan.7.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年3月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
新製された2号車(JPS16)は、アンドレッティのレースカーとして割り当てられます。このJPS16はアンドレッティの意見によりホイールベース短縮を目的としてJPS15からモノコック後端部分が4インチ(100mm)短縮されており、同部分に内臓されていたオイルタンクが、エンジンとギアボックスの間に移動しています。


<外観上の特徴>
・JPS15同様、ブラシスカート先端部分にアルミ製?の板が付くものの、後部のガイドレールは無い。
・JPS15と比較して、サイドポンツーンのJPSロゴが僅かに前方に移動している。
・JPSロゴが前方に移動した分、John Player Specialの文字に大きなスペースを割いている。
・コクピットカウル前端のユニオンジャック部分にNACAダクトが設けられる。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/7/12) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


かつてF1の歴史に伝説を刻んだチーム・ロータスのFマシンについて、その詳細、マシン考証、模型制作を通じて紹介します。