Lotus78 History & Markings – Vol.9 1977 Rd.03 South African GP


今回は1977年第3戦南アフリカGP(3月5日決勝)でのロータス78について紹介します。1月の南半球2連戦で、度重なるアクシデントに見舞われながらも78のポテンシャルを確信したチーム・ロータスは、約1ヶ月半のインターバルでマシンに大幅なアップデートを加え、直前のキャラミ・テストを経てレースウィークへと臨みました。尚、このテスト期間中でのマリオ・アンドレッティによるJPS16(ロールバー上方にピトー管を装備)の写真が数枚確認出来ますが、全体像が不明な為にここでは割愛とさせて頂きます。またTiplerの本によると、3号車(JPS17)が完成してキャラミへ持ち込まれたものの使用されなかった、との記述があるものの、裏付けに乏しい為にここでは疑問を呈しておきます。

写真:1977年南アフリカGP決勝(LAP17/78)、ホームストレートでトム・プライスのシャドウDN8に並ぶ間もなくパスされるグンナー・ニルソンのJPS15。ニルソンはエンジンの不調によりストレートスピードの不足に苦しんでいた。
そしてこの僅か8分後のLAP23、そのプライスは突然のアクシデントで凄惨な事故死を遂げ、ニルソンは後方でその一部始終を目撃してしまう。(ZDF


【FILE 17. 1977 Rd.03 SOUTH AFRICAN GP – Mar.03-05.1977】 v1.2
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年5月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
まずはニルソンのJPS15から。前戦ブラジルGPから、特に空力面を中心に大幅なアップデートが施され、シーズン通じての標準的な形に近付いています。まず目立つのはインダクション・ボックスが大型化され、全体がドライバーのヘルメットを覆う高さまで高くなっています。吸気口もラム圧の高い空気を取り入れる為に高い場所へ移動しました。次にサイドウィングではラジエーターのエアアウトレット前面にフィンが追加されました。尚、このフィンは結局1977年には再度採用される事はありませんでしたが、1978年の南アフリカGPで復活、以後標準装備となります。更に後端のアップスイープも変更され、上面は平面ながら角度が3~4段階に変更可能となっています。またブラジルGPではアップスイープ面にあったリアブレーキ冷却用のNACAダクトを廃止してベンチュリー空間を確保し、ダクトはエンジンのカムカバー後方へと移動しています。更にスカートはブラシ式から「Suck-Up」と呼ばれるポリエチレン製のプレートを内側へと折り曲げた方式に変更されて軽量化とベンチュリー効果の向上を図り、更にマシン下面にはボルテックス・ジェネレーターが追加されました。またマーキングも変更されて各ロゴの記載位置が変更されています。
このマシンで予選10位を獲得したニルソンでしたが、決勝ではスタートからエンジンが不調に陥ってストレートで1万200回転しか回らず、およそ600回転はロスしていた状態での走行を強いられ、じりじりと順位を落とします。そして23周目のホームストレートで、ニルソンの前を走っていたシャドウのトム・プライスが消火器を持ってコースを横断して来たマーシャルと接触して共に死亡するアクシデントが発生、ニルソンは事故の破片でフロントノーズと両リアのタイヤにダメージを受けたものの、事故によるピットロードの混乱でピットイン出来ず、更に後退してしまいます。その後結局タイヤ交換を終えてレースに復帰したものの、ニルソンは事故を目撃してしまったショックとその後の混乱により既に戦意を喪失しており、1周遅れの12位で完走するのが最大限の結果でした。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がった仕様で、以後主にレースカーで使用される。
・フロントウィング上面のValvolineロゴの記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・コクピットカウルのJohn Player Specialの文字が後方に移動。
・サイドウィングはアップスイープ付き、上面は平面タイプ。
・サイドウィング側面のマーキング変更。JPSロゴが消え、前方からJohn Player Specialの文字、ユニオンジャック、カーナンバーの順でそれぞれサイズを拡大。
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・サイドスカートはSuck-Upタイプへ変更。
・モノコック最後部のNGKロゴは四角形タイプに変更。
・インダクションボックスが大型化される。
・リアウィング上面のJohn Player Special文字の記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/11) 新規作成
・v1.1(2011/9/13) 出典に関する誤記訂正
・v1.2(2011/10/12) ラジエーターエアアウトレットのフィン、及びこれに関する記述を追加


【FILE 18. 1977 Rd.03 SOUTH AFRICAN GP – Mar.03-05.1977】 v1.2
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年5月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
マリオ・アンドレッティのJPS16にもニルソンのJPS15と同様のアップデートが施されますが、こちらは更にフロントとリアの両ウィングにも変化が見られました。
フロントウィングは翼端板が変更され、空気抵抗の減少を狙ってか最小限の面積に抑えた半月形の形状になっています。この翼端板はその後のシーズンにおいてアンドレッティのレースカーで標準的に使用されました。一方リアウィングはこのレースのみで用いられた独特の仕様で、ウィング本体は当時のロータスとしては異例となるメインエレメントとフラップが分離した2枚タイプ、そして翼端板も大型化されたものとなっています。恐らくストレートの長い高速サーキットであるキャラミで、ニルソンは従来型のローダウンフォース仕様、アンドレッティはハイダウンフォース仕様としてそれぞれの違いを比較したか、ドライバーの好みが反映されたものと想像されますが、結局このウィングがその後再度採用される事はありませんでした。
このレースでもアンドレッティは不運が続き、高地対策のミスからなのか、プラクティスからエンジンを2基立て続けに壊してセットアップが進まず、彼にとっては不満の残る予選6位という結果に終わります。そしてレースでもトップスピードの不足から先頭集団のペースについて行けず、ブラバムのジョン・ワトソン、フェラーリのカルロス・ロイテマンといった12気筒勢にパスされて8番手に後退します。コーナーで詰めてはストレートで離されるという繰り返しにフラストレーションが溜まったアンドレッティは結局44周目、コース中盤のクラブハウス・コーナーでロイテマンに強引にオーバーテイクを仕掛けてフェラーリのリアホイールに接触、フロントサスペンションを壊してリタイアとなってしまいました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、開幕戦アルゼンチンGPで使用されたカギ部分が丸いタイプに戻る。
・フロントウィング翼端板は半月形タイプへ変更。
・フロントウィング上面のValvolineロゴの記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・コクピットカウルのJohn Player Specialの文字が後方に移動。
・サイドウィングはアップスイープ付き、上面は平面タイプ。
・サイドウィング側面のマーキング変更。JPSロゴが消え、前方からJohn Player Specialの文字、ユニオンジャック、カーナンバーの順でそれぞれサイズを拡大。
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・サイドスカートはSuck-Upタイプへ変更。
・モノコック最後部のNGKロゴは四角形タイプに変更。
・インダクションボックスが大型化される。
・リアウィング本体はこのレースのみで使用されたメインエレメントとフラップが分離した2枚タイプ。中央部にサポート用のヒンジ有り。
・リアウィング上面のJohn Player Special文字の記入位置が後方に移動。後方のJPSストライプが中断され、その上に乗る形になる。
・リアウィング翼端板も、このレースのみで使用された大型タイプ。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/11) 新規作成
・v1.1(2011/9/13) 出典に関する誤記訂正
・v1.2(2011/10/12) ラジエーターエアアウトレットのフィン、及びこれに関する記述を追加


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


2 thoughts on “Lotus78 History & Markings – Vol.9 1977 Rd.03 South African GP”

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    こんばんは、A BOOKSHELFです。
    南アGPマリオ車のリヤウイングに関する記事がAUTO SPORT 5月15日号・58ページに
    ありましたので原文のまま記します。
    ●マリオはウイングなしで南アに出場
     キャラミ・サーキットの長い下り勾配の直線路は、
     各チームにとってスピードのかせぎどころとなっている。
     どのチームのマシンが、空気抵抗を最小にして、ここで最高のスピードを出し、
     しかもそれにつづくきつい右カーブをうまく走りぬけるかが、興味のもたれるところだった。
     ほとんどのチームは、リヤ・ウイングの角度をゼロにしたのに対して、
     ロータスはマリオ・アンドレッティの車のウイングを全部取り外して出場させた。
     これで、アンドレッティはストレートで400rpmもうけたが、
     ラップ・タイムは逆にほかの車より2秒も遅かった。
     ウイングがないので、ほかの車よりすっと早めにコーナーの手前でブレーキングを
     しなければならないのがひびいたのだった。(by Eoin Yong)

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFさん
    いつも興味深い投稿、ありがとうございます。
    「出場」って、決勝レースに出走したって事なのでしょうか。。。
    うーん、AUTO SPORTの1977年5月1日号のカラーグラビアに写っているレーススタート直後の写真には
    明らかにアンドレッティ車に(ニルソン車にも)リアウィングが写っていますし。。。謎です。
    Bruce Grant-Braham著「Lotus – A Formula One Team History」によれば、ウィング無しで走ったのは
    キャラミ・テストの時だった様で、ここには同様に、タイムは2秒落ちだったという記述も有ります。
    改めてAUTO SPORTの1977年5月1日号を見てみると、82ページにピトー管を装備したJPS16の写真が
    有りますが、どうもこの時はウィングが取り外されていた様ですね。
    …という訳で、また新たな発見がありました。
    今後ともよろしくお願いいたします。

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