Lotus78 History & Markings – Vol.11 1977 Rd.04 U.S.GP West


今回はアメリカ西海岸ロングビーチで行われた1977年第4戦USGPウエスト(4月3日決勝)でのロータス78について紹介します。このレースからチーム・ロータスはニューシャシーのJPS17(78/3)をマリオ・アンドレッティのレースカーとして投入、それまでアンドレッティのレースカーであったJPS16(78/2)をグンナー・ニルソンのレースカーへ、そしてJPS15(78/1)をスペアカーへと配車を変更しています。1月の開幕からノンタイトルを含め4レース、延べ6回の出走で一度もトラブルフリーでレースを終えた事の無いチーム・ロータスでしたが、精力的に続けたマシンの改良が遂にこのニューシャシーで結実、そしてその後のシーズンの快進撃へと繋がって行きます。
※尚、このレースでのJPS15の仕様については全体写真が無く不明な為、ここでは割愛させて頂きます。

写真:1977年USGPウエスト決勝(LAP77/80)、バックストレートエンドのヘアピンで、スタートから終始トップを守っていたジョディ・シェクターのウルフWR1のインを差してトップへ浮上したしたマリオ・アンドレッティのJPS17。アンドレッティはそのままチェッカーまで走り抜け、ロータス78に初の優勝をもたらす。この優勝はグラウンドエフェクトカーによる初の優勝であり、その後1982年まで続いたグラウンドエフェクト時代の幕開けを告げる、記念すべき優勝となった。またアンドレッティ自身も、アメリカ人初の母国GP優勝となったこの勝利を、「生涯最高のレース」と後に振り返ったというが、それにふさわしい好レースだった。(ZDF


【FILE 20. 1977 Rd.04 U.S.GP WEST – Apr.01-03.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
このレースからニルソンのレースカーは、これまでのJPS15からアンドレッティがこれまで使用していたJPS16へと変更になりました。前回のレース・オブ・チャンピオンズからの変更点として、サイドウィングのアップスイープ面が曲面(角度調整は廃止)となり、気流をよりスムーズに流そうという工夫が見られます。また、フロントウィングの翼端板はこれまでニルソンが使用して来た物と同タイプに戻され、ロールバーもニルソン用の背の高いタイプに変更されています。また、低速ストリートコースであるロングビーチ向けに、レース・オブ・チャンピオンズでも装備されたリアウィングの延長フラップに加えて、フロントウィングにはガーニーフラップが追加されています。尚、レース・オブ・チャンピオンズではタバコ広告規制の為に消されていたJohn Player Specialのロゴが復活していますが、リアウィング上面の文字はメインエレメント上に記入されており、延長フラップ部分には掛かっていない事が注意点です。
ロングビーチでのニルソンは全体的に不運に見舞われます。プラクティスではショートホイールベース仕様であるJPS16への慣熟に取り組みますが、先ずはブレーキバランスに問題が発生、続いてダンパーが壊れるトラブルに見舞われ、更にはタイヤのパンク、そしてヘアピンコーナーでコンクリートウォールに接触してリアサスペンションのトップリンクを破損するなど散々な状態で予選16位に沈みます。しかしレースでは一転奮闘を見せ、スタート直後の第一コーナーで発生した、マクラーレンのジェームス・ハントがフェラーリのカルロス・ロイテマンとの接触から宙を舞った混乱を上手く潜り抜け、オープニングラップで10位まで上昇、その後はATSのジャン・ピエール・ジャリエと7位争いを展開しますが、最終的にはジャリエと、そしてスタートでの出遅れから追い上げて来たハントにパスされ、1周遅れの8位でのフィニッシュとなりました。

<外観上の特徴>
・レース・オブ・チャンピオンズでは消されていたJPSロゴが復活。
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れていないタイプ。
・フロントウィングにガーニーフラップ追加。
・フロントウィング翼端板は、開幕前より使用されている楔形の物に変更。
・サイドウィングのアップスイープ面は曲面に変更。
・ロールバーはニルソン用の背の高い物に変更。
・リアウィング本体はレース・オブ・チャンピオンズ時同様、低速ストリートコース向けに延長フラップを装備。
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/27) 新規作成


【FILE 21. 1977 Rd.04 U.S.GP WEST – Apr.01-02.1977】 v1.2
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
一方、ニューシャシーのJPS17(78/3)はアンドレッティのレースカーとして投入され、以後翌1978年ベルギーGPにロータス79が実戦投入されるまでの1年以上に渡り、アンドレッティのレースカーとして長く活躍する事になります。外観はアンドレッティ用の半月形フロントウィング翼端板と背の低いロールバー以外は先に紹介したニルソンのJPS16とほぼ同様ですが、細部ではコクピット前方のロールバーが金属パイプ製となり、これに伴い計器盤の取付方法も変更になっています。また、このレースでアンドレッティはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVエンジンを初めて使用します。
ニューシャシーを得たアンドレッティはシーズン開幕以来続いた不運を払拭し、プラクティスからトラブルフリーでトップを争って母国アメリカのファンを沸かせます。更にグッドイヤーのリアタイヤを数種類試し、加減速の激しいストリートコースながら27.25インチという一番直径の大きいタイヤをチョイス、コーナー立ち上がりのトラクションの良さに対する自信を見せます。しかし土曜午後の最終セッションにてフェラーリのニキ・ラウダに及ばず、今シーズン初のポールポジションは逃したものの予選2位を獲得、日曜のレースに期待を繋ぎました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、前戦同様のカギ部分が丸いタイプ。
・フロントウィングにガーニーフラップ追加。
・フロントウィング翼端板は、アンドレッティ用の半月形タイプ。
・サイドウィングのアップスイープ面は曲面タイプ。
・リアウィング本体はレース・オブ・チャンピオンズ時同様、低速ストリートコース向けに延長フラップを装備。
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入。
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは左バンク後上方と右バンク前上方のカムカバーに記入。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/27) 新規作成
・v1.1(2011/11/22) ニコルソン-マクラーレンのロゴに関する記述を追加
・v1.2(2012/03/05) マシンの仕様に関する記述を訂正


【FILE 22. 1977 Rd.04 U.S.GP WEST – Apr.03.1977】 v1.2
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年6月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが4月3日の決勝でのJPS17の姿。フロントノーズ先端に、ブラジルGPでのJPS15に装備されていた小型のフィンが追加されています。このフィンはFILE.21の状態では未装備・装備済の両方の状態が確認出来る事から、週末のどこかの段階でJPS17にのみ追加装備されたものと思われます。また、フロントノーズのカーナンバー下部に赤のストライプが入っています。恐らくニルソンの「6」との識別性を高める事が目的ではないかと想像されますが、何故このレースでのみ(その後、1978年モナコGP決勝でも同様のストライプが見られました)この様な形が取られたのか、その理由は不明です。
決勝レースでは、予選2位のアンドレッティは3位だったウルフのジョディ・シェクターにスタートでパスされるものの、ポールポジションだったラウダに先行して2位をキープします。アンドレッティは途中ラウダにパスされるものの都度抜き返し、レースはシェクター、アンドレッティ、ラウダの3台による息詰まる攻防が延々と展開されます。しかし、80周レースの60周を過ぎた頃から、終始トップをキープしていたシェクターの右フロントタイヤにスローパンクチャーが発生、それでもシェクターは必死にトップをキープし続けますが、残り4周となった77周目のヘアピンで遂にアンドレッティはシェクターを攻略、トップに浮上してそのままチェッカーを受け、シーズン初勝利を挙げました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズにフィン追加
・フロントノーズのカーナンバー5は、前戦同様のカギ部分が丸いタイプ。
・フロントノーズのカーナンバー5の下に赤ストライプ追加。
・フロントウィングにガーニーフラップ追加。
・フロントウィング翼端板は、アンドレッティ用の半月形タイプ。
・サイドウィングのアップスイープ面は曲面タイプ。
・リアウィング本体はレース・オブ・チャンピオンズ時同様、低速ストリートコース向けに延長フラップを装備。
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入。
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは左バンク後上方と右バンク前上方のカムカバーに記入。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/27) 新規作成
・v1.1(2011/11/22) ニコルソン-マクラーレンのロゴに関する記述を追加
・v1.2(2012/03/05) フロントノーズのフィンに関する記述を追加


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


2 thoughts on “Lotus78 History & Markings – Vol.11 1977 Rd.04 U.S.GP West”

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFです。
    CAR GRAPHICのUS-GPウエスト記事に「グンナー・ニルソンはこのレースでやっと、自分のJPSをアンドレッティと同じロング・ホイールベース仕様に仕立て直してもらった。ロータスはまた、新考案のテールウイングも持ち込んできたが、それらはトランスポーターの奥深く蔵われたままで、ついにコースには登場しなかった。」と記載があります。
    またAUTO SPORTには「3台目のニュー・シャシーは、JPSロータスのマリオのマシンで、78/3はショート・ホイールベースを採用。ニルソン用は従来のロング・ホイールベースに甘んじている。」との記載もあります。
    これらから、ニルソンはJPS16(78/2)の【ロング・ホイールベース仕様】に手を焼いていたと思われるのですが、いかがでしょうか....。
    そして気になる【新考案のテールウイング】ですが、グランプリ・モデリスタVol.1(モデル・カーズ2001年5月号増刊)に特集されたAll about Lotus 78/J.P.S.MkⅢに、「ロングビーチに持ちこまれた試作型リアウイング。その構成は最近の高速仕様に似た小型で薄いメインウイングに2枚のフラップ。決勝で使われることもなく終わった。」との注釈がついたイラスト2種類が掲載されています。
    イラストが何を出典に書かれたかは不明ですが、その写真があれば一度見てみたいものです。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFさん
    確かに78/2に関しては、ご指摘の通りのロングホイールベースであるという文献と、ショートホイールベースであるという記述があり、私も迷いました。
    私がこの連載記事を書く時に主に参考文献としているJohn Tipler著「Lotus 78 & 79 – The Ground-Effect Cars」と、Bruce Grant-Braham著「Lotus – A Formula One Team History」(個人的には、この両文献の記述が最も詳細で、信憑性が高いと評価しています)では共にショートホイールベースとしており、従ってはショートホイールベース説を採用しました。
    小型のリアウィングに関してはTiplerの本にも記述がありましたが、私も写真を見た事が無く特に言及しなかったのですが、確かにGPモデリスタにイラストがありましたね。但し私も写真を見た事が無く、見てみたいですね!

A+BOOKSHELF へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


*