今回は1977年第7戦ベルギーGP(6月5日決勝)でのロータス78について取り上げます。前戦モナコGPでは今一つ精彩を欠いたロータス78ですが、ゾルダーでは再び圧倒的な速さを見せつけますが、しかしその主役はマリオ・アンドレッティではなくグンナー・ニルソンでした。
写真:1977年ベルギーGP決勝(LAP50/70)、シケイン入口でニキ・ラウダのフェラーリ312T2のインを差し、トップへ浮上したグンナー・ニルソンのJPS16。ウェットからドライへのタイヤ交換に手間取り、大きく後退してしまったニルソンだったが、その後はトップを走っていたラウダよりもラップ2秒も速い激走を見せて次々に順位を上げ、そして初優勝を手中にする。雨絡みのレースでの初優勝とあって、単にラッキーな勝利との印象を受けがちだが、実際には勝者にふさわしい圧倒的な速さを見せつけての優勝であった。(Motors TV)
【FILE 32. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.3.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson
参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

ニルソンがこのセッションでスペアカーを使用した理由として、これまでアンドレッティが使用して来たサリスバリー製のノンスリップデフに、デフの利き具合を調節可能にした改良版をテストする目的があったものと考えられます。結局アンドレッティはこの改良版デフを使う事に決めたものの、ニルソンのドライビングにはマッチしなかった為、以後ニルソンは通常のZF製のデフに戻して走行しています。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は楔形タイプ
・コクピットカウルにPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ追加
・サイドウィングのアップスイープは平面タイプ
・左側サイドウィングのカーナンバーはアンドレッティの「5」(右側は推定)
・ロールバーはニルソン用の背の高いタイプ
・ドライバー名なし
・インダクションボックスのKONIロゴなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入
<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成
【FILE 33. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.4.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson
参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

ニルソンはスペアカーというハンディにも負けずこのセッションで3番手のタイムを記録、自身最上位のグリッドを獲得しましたが、それでもニルソンは不満でフロントローが奪えなかった事を悔しがっていました。実際今回も圧倒的な速さでポールを奪ったアンドレッティとは2秒もの差を付けられていました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れていないタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・サイドウィングのアップスイープは平面タイプ
・右側サイドウィングのカーナンバーはフロントノーズ用を代用
・ロールバーはニルソン用の背の高いタイプ
・ドライバー名なし
・インダクションボックスのKONIロゴなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入
<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成
【FILE 34. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.5.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson
参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

雨の決勝で3番手からスタートしたニルソンは、ウルフのジョディ・シェクターにパスされたものの、1周目に発生したブラバムのジョン・ワトソンとアンドレッティとのアクシデントを回避、2位をキープして雨が止むまで走行を続け、17周目にライバルよりもやや遅れてピットインします。しかしタイヤ交換作業中に外した左フロントのホイールナットに不具合があった為、スペアカーから外して付け直す(※)などの作業行って約35秒もの時間を要し、13位にまで後退します。しかしその後再び小雨が降り出すなどトリッキーな状況の中を生き残り、20周目に12位、30周目までに4位にジャンプアップ、そして40周目には2位を走っていたマクラーレンのヨッヘン・マスがスピンして2位にまで浮上する猛チャージを見せます。この時点でトップを走っていたフェラーリのニキ・ラウダとの23秒もの大差も、ラウダがレックのデビッド・パーレイをラップする際にコースオフした事もあって僅か10周で追い付いてシケインの入口でパス、その後もラウダを1周2秒のペースで引き離したニルソンは、ボスのコーリン・チャップマンからのスローダウン指示を無視!して最終的にラウダに14秒もの大差を付けてチェッカーを受け、自身初、そして唯一の優勝を挙げました。
※ロータス78はグラウンドエフェクトを得る為にフロントのトレッドをレギュレーション限界まで広くしていました。この為にフロントホイールにスペーサーを使用しており、これに対応する特製のホイールナットが必要でした。Model Factory Hiro刊「Lotus 78,79&80」の22ページにこのスペーサーとホイールナットの写真が掲載されています。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ、JPSストライプなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入
<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成
【FILE 35. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.3-5.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti
参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

圧倒的な速さを発揮したスペインGPから、モナコGPでは精彩を欠いたものの、このベルギーGPではアンドレッティは再びその速さを取り戻し、初日午前のプラクティスではブラバムのジョン・ワトソンをコンマ4秒抑えてトップに立ちます。更に圧巻だったのは土曜日で、今度はワトソンに対して1.5秒もの大差を付けてポールポジションを獲得します。そのワトソンから更に1.5秒以内には予選17位になったシャドウのアラン・ジョーンズまでがひしめく混戦だった事から、アンドレッティの突出ぶりは更に目立ち、このアンドレッティの速さの理由を巡ってパドックで様々な憶測が飛び交う結果となりました。その内容はアンドレッティのドライビングか、サリスバリーのデフの効果か、ニコルソン-マクラーレンのエンジンか、グッドイヤーがアメリカ人であるアンドレッティにだけスペシャル・タイヤを与えているのではないか、といったものでした。一方この日49歳のバースデーパーティーの為にサーキットを留守にしていたボスのコーリン・チャップマンは日曜にサーキットに戻って来た時、その速さの最大の秘密であるグラウンドエフェクトをライバルに研究される事を警戒して神経質になっており、アンドレッティに「手の内を見せ過ぎるな」と厳しく注意したと言われています。
しかし日曜のレースが雨となった事でアンドレッティのシナリオが狂います。スタートで慎重になったアンドレッティはワトソンに先行され、半周も回らないシケインの入口でブレーキングをミスしてワトソンのリアに突っ込み、共にスピンしてリタイアとなりました。スタートに失敗すると勝負を焦って自滅するのは、この後もしばしば見られたアンドレッティの欠点で、この年タイトルを争えるマシンを手にしたアンドレッティは高い代償を払う事になります。もしこのレースで優勝出来ていればアンドレッティはシェクターやラウダと共にポイントリーダー争いに食い込む事が出来た筈でした。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状に変更
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバー形状変更
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入
<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成
ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。
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A BOOKSHELFです。当時の雑誌からの関連情報です。
サリスバリーのフリクションプレート方式のデフを改良して、ノンスリップの度合いをアジャスタブルにした
ロータスチームであったが、トニー・サウスゲートがその秘密の一端を次のように明かしている。
「フリクションプレートの厚みを調整、あるいはアッセンブリー自体を前後させることによって、デフ効果や
フルドライブへの移行をかなり正確にチューンすることができる。ゾルダーにおけるアンドレッティは、まさに
この種のセッティングをエンジョイしたのであって、すべてはケテリンガムホールのロータスの研究グループの努力によるものであったと言えるだろう。」
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A BOOKSHELFさん
いつもありがとうございます。
勿論デフの効果というのも無視出来ないものがあったと思いますが、投稿頂きましたサウズゲートのコメントを見ているとあまりにもオープンに喋り過ぎている印象を受けます。邪推かもしれませんが、F1モデリングNo.20の記事でピーター・ライトが証言している様に、ライバルチームやメディアの関心を殊更デフに向けさせる事で、グラウンドエフェクトの効果を隠そうとしていた意図があったのかも知れませんね。
今後も宜しくお願い致します。