Lotus78 History & Markings – Vol.15 1977 Rd.08 Swedish GP


今回は1977年6月19日にアンダーストープで決勝が行われた、第8戦スウェーデンGPでのロータス78について取り上げます。前戦のベルギーではグンナー・ニルソンが初優勝、そしてティレルのロニー・ピーターソンが3位と、2人のスウェーデン人が表彰台に上がった直後とあって、サーキットにはベルギーの再現を期待する多くのファンが詰めかけましたが、ニルソンだけでなくチーム・ロータスにとっても不運に見舞われたレースとなってしまいました。

写真:1977年スウェーデンGP決勝序盤、トップを快走するマリオ・アンドレッティのJPS17と周回遅れとなったグンナー・ニルソンのJPS16。ニルソンはオープニングラップでの接触によりピットインを余儀なくされ、ピットアウト時にアンドレッティの前に出たものの直ぐにに先行させ、その後暫くアンドレッティのテールに付けて走行を続け、地元ファンの前で意地を見せた。(アンドレッティのポスター写真より)


【FILE 36. 1977 Rd.08 SWEDISH GP – June.17-19.1977】 v1.3
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年8月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらはグンナー・ニルソンのレースカーであるJPS16。前戦ベルギーではフロントウィング翼端板のJPSストライプが無い状態でしたが、このスウェーデンではJPSストライプが追加されています。また、ゾルダーよりも比較的高速であるアンダーストープに対応し、リアウィングの追加フラップが小型化され、ほぼ通常のガーニーフラップに近い形になっています。この他このスウェーデン独特の特徴として、車検合格を示す円形のステッカーが、コクピットカウル開口部、左側ミラー付根部分に添付されています。またこのレースから、エンジンのキルスイッチの位置を示す「E」マーク(円内に「E」の文字、色は赤)が右側NGKロゴの上方に追加されています。
尚、このレースでニルソンはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用しており、おなじみA BOOKSHELFさんのページにも、ニコルソンDFVを搭載したJPS16のパドックにおける写真が掲載されています(レース中の写真でも確認済)。一般的に言われている説では、ニコルソンDFVはマリオ・アンドレッティのみに供給されていたとされていますが、このレースでアンドレッティは後述するコスワースのスペシャルDFVを使用した事もあり、多分にベルギーでの優勝に対する報償と地元レースという配慮が有った可能性があります。
ベルギーGPでグランプリ・ウィナーの仲間入りを果たして地元に凱旋したニルソンは、ファンからの大歓迎やメディアの取材で多忙なインターバルを過ごしました。プラクティスではスロットルケーブルがスタックするトラブルに見舞われながらも、ニルソンはアンドレッティからコンマ8秒差の予選7位に着け、日曜のレースに期待を持たせました。しかしレースではスタート直後の第一コーナーでマクラーレンのヨッヘン・マスと接触してマシンが浮き上がり、着地した際に今度はティレルのパトリック・デパイエに追突、やがて右フロントウィングを失い早々にピットインを余儀なくされます。すぐさまノーズを修復してコースに戻った際、トップを走るアンドレッティの目の前に出た為、コーリン・チャップマンからのオーダーでアンドレッティに先行させてラップ遅れとなったものの、その後数周にも渡ってアンドレッティのテールに着けて走り続けました。しかし72周のレースも残り僅かになった65周目、ホイールベアリングにトラブルが発生して地元で無念のリタイア(記録上は19位完走扱い)となりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・コクピットカウル左前方に車検合格証貼付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィングにガーニーフラップ追加、上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/10) 新規作成
・v1.1(2011/12/14) ニコルソンDFVに関する記述を修正(Thanks to A BOOKSHELFさん)
・v1.2(2011/12/14) レースでのニコルソンDFV使用を確認した為、記述及び画像修正
・v1.3(2011/12/26) キルスイッチの「E」マークに関する記述追加、画像修整


【FILE 37. 1977 Rd.08 SWEDISH GP – June.17-19.1977】 v1.2
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年8月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
アンドレッティのレースカーであるJPS17は、フロントノーズのカーナンバー5に若干の変更が見られます。「5」のカギ部分根元が斜めにカットされているのは同様ですが、全体的に直線的かつ縦長になり、カギ部分の開口部が更に広がっています。以後アンドレッティのカーナンバー5は、この書体が使われる続ける事になります。また、ニルソンのJPS16では左ミラーの付根部分に添付された車検合格証ですが、このJPS17ではコクピット開口部直前のほぼ中央に添付されている違いがあります。またJPS16同様、右側NGKロゴ上部に「E」マークも追加されています。しかし何より最大の特徴は、サイドプレートのカーナンバー5で、左サイドはベルギーから採用されたカギ部分が丸いタイプですが、右サイドはベルギー以前に使われた角張ったタイプを使用しています。エンジンはプラクティスではニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用したものの(写真でも確認済)、レースではコスワースが新たに開発したスペシャルDFVを使用しています。
ベルギーに引き続き、アンドレッティはこのスウェーデンでもプラクティスから好調で、2戦連続のポールポジションを獲得します。レースでもスタートダッシュを決めると後続を引き離し、ラップ遅れのニルソンを従えて快走、そして独走状態となります。しかしレース中盤以後、アンドレッティはJPS17に搭載されたスペシャルDFVの混合気が次第に濃くなるのを感知し、ガス欠の危険が高まってきた為に残り5周となった所でアンドレッティは給油の為に急遽ピットインします。このトラブルの原因はフューエルメータリングユニット(燃料混合気調節機構:詳細はA BOOKSHELFさんのコメント参照)が、振動によってフルリッチの状態になってしまった為でした(※)。アンドレッティはスプラッシュ&ダッシュでピットを出たものの、その間にアンドレッティの遥か後方にいた2位争いのバトル集団が通り過ぎて行き7位にまで後退、最終的にアンドレッティは6位でフィニッシュしたものの、またしても勝てるレースを落とす結果となりました。おまけにレース後、チームがマシンのチェックを行ったところ、今回グッドイヤーが新たに持ち込んだタイヤのスペックが、週末の間ずっとチャップマンの指定と違った物であった事が判明し、ガス欠の件と相まってチャップマンの怒りに油を注ぐ結果になってしまい、加えてアンドレッティはピットアウトの際にピットレーン出口の赤信号を無視した事により、オフィシャルから罰金を言い渡され、チーム・ロータスにとって何とも後味の悪い週末となってしまいました。
※F1モデリングNo.20ではこのガス欠について、チャップマンがレース前に燃料を抜いて車重を軽くしようとした事が原因だとしていますが、他の文献にはこの様な記述が見当たら無い事から、真偽の程は不明です。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバーは左が新タイプ、右は旧タイプ
・コクピットカウル中央前方に車検合格証貼付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィングにガーニーフラップ追加、上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/10) 新規作成
・v1.1(2011/12/14) コスワースDFVに関する記述及び画像修正(Thanks to A BOOKSHELFさん)
・v1.2(2011/12/26) キルスイッチの「E」マークに関する記述追加、画像修整


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


3 thoughts on “Lotus78 History & Markings – Vol.15 1977 Rd.08 Swedish GP”

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    【スウェーデンGP】
    A BOOKSHELFです。当時の雑誌からの情報を記します。
    アンドレッティはモナコGPで搭載された試作型DFVとも違う新しいコスワースエンジンを使用。このエンジンは燃料のメータリングユニットが他のDFVと違っており、アジャストが容易にできない仕組みとなっている。(量産型DFVにはミクスチャーカムの調整機構にフレキシブルのアジャスターが付いているのに対して、新しいエンジンにはそれが付いていない。)
    このエンジンにはアジャスト用のエンジン外部ノブが無いことから、メータリングユニットのマウンティングに手を突っ込みスピンドルを引出した後、スピンドルの一端にある指針を希望の混合比のところにまで動かす。そしてスピンドルを元の所に戻すとスプリングの力で指定したノッチの所にセットする力作業が必要となるである。
    アジャストは5段階(No.1が最も希薄、No.5が最も濃厚)で行え、アンドレッティはNo.2でレーススタート。ところが原因不明のエンジン振動でアジャストメント・スピンドルがNo.5まで少しずつ動き、燃料消費率がはね上がり給油が必要になってしまったとの事。
    また、グッドイヤーはこれまでの11Sと13Sとは別のニュータイヤ(フロント用2種-49&38/リヤ用1種-23)を持ち込み、ロータスをはじめ希望するチームに急遽供給している。

  2. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFさん
    なるほど、この記事を読むと幾つか参考文献を読んでいて感じていた疑問が解消しました。
    Bruce Grant-Brahamの著書では、アンドレッティがコスワースの新製DFVを使ったとしており、フューエルメータリングユニットのトラブルは、この新製DFVを使った事と関連していたんですね。同GPでのアンドレッティ車にはニコルソンDFV搭載とニコルソンのロゴ無しの写真が混在していて、決勝でどちらを使用したか判りませんでした。
    しかも、という事は同著に記述されているニルソンがニコルソンDFVを使ったとの記述もかなり信憑性が持てる事になりそうです。
    大変勉強になりました。m(_ _)m

  3. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    A BOOKSHELFさん
    あともう一つタイヤの話ですが、同著には「レース後、アンドレッティのマシンに装着されていたタイヤが、チャップマンが指定した物と別の物だった事が判明、ガス欠の件と相まってチャップマンの怒りに油を注ぐ事になった」との記述もありました。最初に記事を投稿した段階ではこのニュータイヤの話を知らず、ネタに乏しかった為記載しなかったのですが、これも追補しておきます。
    ありがとうございました。また宜しくお願い致します。

Ketteringham Factory へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


*