今回はアルゼンチンGPから2週間後の1月29日に決勝が行われた1978年ブラジルGPでのロータス78について取り上げます。舞台となるサーキットは前年まで開催されていた首都サンパウロ近郊のインテルラゴスから、カーニバルで有名なリオデジャネイロ近郊のジャカレパグア・サーキットへと移り、以後1990年に改修されたインテルラゴスに戻るまでブラジルGPの舞台となる事になりました。サーキットの特性も大きく変わり、アップダウンが激しい高速コースのインテルラゴスとは対照的にジャカレパグアのコースはほぼフラットで、1kmあるバックストレートと短いホームストレートを除けばツイスティな鋭角コーナーが連続するストップ&ゴータイプのサーキットで、サリスバリー製のデフの効果でコーナーからの立ち上がりに優れるロータス78に有利なサーキットと見られていました。
写真:1978年ブラジルGP決勝(LAP15/63)、バックストレートで5位を争うロニー・ピーターソンのJPS16(左)とジル・ヴィルヌーヴのフェラーリ312T2。2台はこの先のサル・コーナーの進入で接触、共にコースオフを喫してしまう。2人にとっては前年の日本GPに続く因縁の接触となった。(ZDF)
【FILE 73. 1978 Rd.2 BRAZILIAN GP – January.27-28.1978】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Ronnie Peterson
参考資料:
・AutoSport 1978年4月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
最初は、ロニー・ピーターソンのJPS16。イラストはプラクティスの状態と思われ、前戦アルゼンチンGPから外観上の差異は殆ど見られませんが、中速サーキットであるジャカレパグアに合わせてリアウィングのエレメントが変更され、非常に曲率が大きくかつガーニーフラップも装備されたハイダウンフォースな物が採用されています。前戦アルゼンチンGPで優勝を上げた事によりウィニング・ローレルの有無が気になる所ですが、写真を見る限り記入されていない様です。またこのレースでピーターソンはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用した模様です。
ピーターソンは金曜日の最初のセッションで、アルゼンチンでのトラブルから改良を受けたロータス/ゲトラグ製ギアボックスを試すものの、またも早々にトラブルが発生して大きく出遅れてしまいます。午後にはヒューランド製のギアボックスに戻されたものの6位に留まります。しかしセットアップを煮詰めてアンダーステアを解消したピーターソンは土曜日のセッション終了間際にトップタイムを記録、自身にとって1976年オランダGP以来1年半振り、通算13回目のポールポジションを獲得しました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側キルスイッチ位置現示マークなし
・リアウィングにガーニーフラップ装備
・ポーラー・キャラバンのロゴはインダクションボックスのエアインテーク側面に記入(左右共にリア側が頭)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴはカムカバー後上方に記入
<改訂履歴>
・v1.0(2012/08/10) 新規作成
【FILE 74. 1978 Rd.2 BRAZILIAN GP – January.29.1978】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Ronnie Peterson
参考資料:
・AutoSport 1978年4月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが決勝時のJPS16。注目点はフロントノーズのオイルクーラーのエアインテーク上方にフィンが追加されている点です。アルゼンチンに続く酷暑のコンディションに配慮してか、オイルクーラーに強制的に空気を取り込む様な形状をしています。
決勝を久し振りのポールからスタートしたピーターソンでしたが、スタートでホイールスピンが多かった為、4位スタートからダッシュを決めたフェラーリのカルロス・ロイテマンにパスされて2位に後退、その後もまたしてもアンダーステアに苦しむ事になったピーターソンは瞬く間にロイテマンに引き離され、そして周回が進むにつれマクラーレンのジェームス・ハント、チームメイトのマリオ・アンドレッティ、そして地元観衆の大声援を受けて健闘を見せるコパスカーのエマーソン・フィッティパルディに次々とパスされて5位に後退します。そして15周目、バックストレートでフェラーリのジル・ヴィルヌーヴがピーターソンのスリップストリームを捉えます。ストレートエンドにある高速左コーナーのサル・コーナーの進入ではピーターソンはヴィルヌーヴに先んじたものの、強引にインを突いて来たヴィルヌーヴの右フロントタイヤとピーターソンの左リアタイヤが接触、共にコースオフを喫してしまいます。ヴィルヌーヴに遅れてコースに復帰したピーターソンはタイヤ交換の為にピットイン、コースに復帰しますが、先の接触により左リアサスペンションが既に壊れており、コースアウトを喫したピーターソンはリタイアとなってしまいました。マシンを降りた後もコースサイドに留まり、ヴィルヌーヴに対して抗議の拳を振り上げていたピーターソンは、ピットに戻るとアンドレッティのサインボード係を務めていました。
シーズン開幕前、アンドレッティはピーターソンのチーム復帰を歓迎していなかった事から、2人のドライバー同士の関係がチーム・ロータスの最大の懸念材料と思われていました。しかしチーム内での自分の立場を十分に理解しており、更にアンドレッティのテストやレースにおけるプロフェッショナリズムに大きな感銘を受けたピーターソンは、シーズンが進むにつれアンドレッティへの称賛と敬意を公言する様になります。そして2人のドライバーは共に最高のチームメイトとして協力し合う様になり、この年F1の歴史に残る最強コンビを形成する事になります。
・フロントノーズのオイルクーラー上方にフィンを追加
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加
・右側キルスイッチ位置現示マークなし
・リアウィングにガーニーフラップ装備
・ポーラー・キャラバンのロゴはインダクションボックスのエアインテーク側面に記入(左右共にリア側が頭)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴはカムカバー後上方に記入
<改訂履歴>
・v1.0(2012/08/10) 新規作成
【FILE 75. 1978 Rd.2 BRAZILIAN GP – January.27-28.1978】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti
参考資料:
・AutoSport 1978年4月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
マリオ・アンドレッティのJPS17のプラクティスにおける姿。JPS16同様に曲率の大きなリアウィングのエレメントを採用している以外は、ほぼアルゼンチンGPでのレース時に近い姿をしています。同様にリアウィングのウィニング・ローレルも描かれていない様です。また、アンドレッティはこのレースでも引き続きコスワースのスペシャルDFVを使用した模様です。
戦前の予想通り、アンドレッティはこのジャカレパグアでは金曜日から好調でトップタイムをマークします。しかし土曜日のセッションでは一転不運に見舞われてクリアラップを取る事が出来ず、トップタイムをマークしたピーターソンに遅れる事コンマ2秒で予選3位というやや不満足な結果に終わりました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・右側キルスイッチ位置現示マークなし
・リアウィングにガーニーフラップ装備
<改訂履歴>
・v1.0(2012/08/10) 新規作成
【FILE 76. 1978 Rd.2 BRAZILIAN GP – January.29.1978】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti
参考資料:
・AutoSport 1978年4月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
アンドレッティのJPS17も、決勝時にはJPS16同様、フロントノーズのオイルクーラー上部にフィンが追加され、オイルクーラーの冷却効果を高めています。
決勝を3番手からスタートしたアンドレッティはスタートでロイテマンに先行されましたが、5周目に後退して来たピーターソンとハントをパスして2位に浮上、トップを快走するロイテマンを追います。しかし既にミシュランタイヤのアドバンテージを活かして大きなリードを築いていたロイテマンとの差を詰める事が出来ず、対するグッドイヤーのエースであるアンドレッティはアンダーステアに苦しみ、次第に引き離されて行きます。逆転は不可能と判断したアンドレッティはペースを落として2位キープに切り替えますが、レースも残り7周となった56周目に最も頻繁に使う3速ギアがオーバーヒートにより破損、ギアボックスにトラブルが発生して4速ギアのみでの走行を強いられます。タイトコーナーの立ち上がりは勿論、ストレートスピードも伸びなくなったアンドレッティはペースを大きく落とし、狂喜する地元観衆の大声援に後押しされたフィッティパルディに58周目にパスされて3位に後退、更に61周目にブラバムのニキ・ラウダにもパスされ、結局4位でチェッカーを受けました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのオイルクーラー上方にフィンを追加
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・ラジエーターのエアアウトレット前面にフィンを追加。
・右側キルスイッチ位置現示マークなし
・リアウィングにガーニーフラップ装備
<改訂履歴>
・v1.0(2012/08/10) 新規作成
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