Lotus78 History & Markings – Vol.10 1977 Race of Champions


今回は1977年3月20日にイギリスのブランズ・ハッチで開催されたノンタイトル戦、レース・オブ・チャンピオンズでのロータス78について紹介します。現代のF1では考えられない事ですが、1970年代までは通常のチャンピオンシップ(世界選手権)とは別にこういったノンタイトルでのF1レースが毎年開催されており、シルバーストーンでは「BRDCインターナショナル・トロフィー」、ブランズ・ハッチでは「レース・オブ・チャンピオンズ」という名称で開催されていました。しかしF1における参戦コストの高騰から、チャンピオンシップ・ポイント加算の対象にならないノンタイトル戦は、参戦意義が薄い為にチーム側から敬遠される様になり、結局シルバーストーンでは1978年を最後にF1での開催を終了してF2へ移行、ブランズハッチでは1979年を最後に終了(1983年に一度だけ復活)しています。その後1980年代初頭にはF1界における政治的混乱(イギリス系チームvs大陸系チーム、FOCAvsFISA、ドライバーvsチームなど)から一部のレースがチャンピオンシップから除外される形で数戦のノンタイトル戦は行われたものの、その後はF1でのノンタイトル戦は行われなくなりました。

写真:1977年3月20日、レース・オブ・チャンピオンズでマリオ・アンドレッティがドライブするJPS16。リアウィングの翼端板が大型化され、その後の標準的な形状へと変化している。尚、この写真ではフロントウィング翼端板がブラジルGPまで使用されていた旧型のタイプとなっているが、マシンは恐らくJPS15ではなくJPS16と思われる。(A BOOKSHELF


【FILE 19. 1977 RACE OF CHAMPIONS – Mar.20 1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年5月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
1977年のレース・オブ・チャンピオンズはイギリス系チームを中心に17台が参加(大陸系のフェラーリ、リジェ等は参加せず)し、トラブルに見舞われたBRMを除く16台が決勝に出走、チーム・ロータスはこのレースに、マリオ・アンドレッティをエントリーさせ、JPS16をレースカーに、JPS15をスペアカーとして持ち込みました(因みにこの時のJPS15の仕様については不明)。
外観上の大きな特徴は何といってもJPSのロゴと文字が消えたマーキングですが、これはイギリスとドイツにおいてTVでのタバコ広告が禁止されていた為です。現在はEU諸国を中心にタバコ広告は全面禁止が主流ですが、当時はイギリスとドイツだけ、しかもサーキットの看板は観衆向けという事なのか?規制されておらず、タバコの広告看板の目の前をロゴが塗りつぶされたマシンが走る、という奇妙な風景も見られました。この他にも1976年12月のプレス発表以来消えていた、インダクションボックスのKONIロゴが復活している事も特徴です。さらにリアウィングの翼端板の形状が変更され、曲率の大きなウィングにも対応可能な大型のものとなり、以後この形状が標準的に使用される事になります。また、外観上は分かりづらい(このイラストでも表現していません)ですが、ベンチュリー後方気流をスムーズにする為にリアのアンチロールバーのレイアウトが変更され、これまでのリアアップライト後下方から前上方に移動しています。
このマシンでアンドレッティはブラバムのジョン・ワトソンに次ぐ予選2位を獲得、レースではスタートで出遅れたワトソンをパス、マクラーレンのジェームス・ハントを従えてトップを走行します。その後も終始ハントの攻撃を封じ続けたアンドレッティでしたが、40周レースの残り7周となった34周目に電気系統のトラブルが発生、リタイヤを喫してしまいました。原因はエンジンの振動によってバッテリーマスタースイッチのコネクタの一つが破損した為でした。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、前戦同様のカギ部分が丸いタイプ。
・マーキングはJPSロゴと文字が消された英独レース仕様。
・インダクションボックスのKONIロゴが復活。
・サイドウィングはアップスイープ付き、上面は平面タイプ。
・リアウィングの翼端板形状変更。
・ウィング本体は中速テクニカルのブランズ・ハッチ向けにフラップを延長。
・リアのアンチロールバー仕様変更。


<改訂履歴>
・v1.0(2011/9/19) 新規作成


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