この連載もついに迎えて20回目、今回はザンドボールトで行われた1977年第13戦オランダGP(8月28日決勝)でのロータス78について取り上げます。ザンドボールトは1985年を最後にF1の舞台からは消えましたが、北海沿岸のリゾート地に設けられたこのサーキットはどこか荒涼とした雰囲気が漂い、照り付ける夏の陽射しと相まってまさにタイトル争いの決闘場というべき緊張感を醸し出していました。1977年シーズンもいよいよ終盤を迎え、タイトル争いのリードを大きく広げていくフェラーリのニキ・ラウダに対し、僅かな可能性を残す挑戦権をめぐる争いは逆に激しさを増していきます。夏の高速サーキット3連戦を終え、中速サーキットのザンドボールトはコーナリングに優れるロータス78を駆るマリオ・アンドレッティにとって、巻き返しを図る絶好の機会であった筈でしたが、しかしその結果は厳しいものとなりました。
写真:1977年オランダGP決勝(LAP6/75)、ホームストレート先のタルザン・コーナーでトップを走るジェームス・ハントのマクラーレンM26にアウトからオーバーテイクを仕掛けるマリオ・アンドレッティのJPS17。僅かなタイトルへの望みを賭けた両者の一歩も引かない攻防は、この数秒後に最悪の結末を迎え、二人の間に禍根を残す事になる。(Motors TV)
【FILE 54. 1977 Rd.13 DUTCH GP – August.26-27.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson
参考資料:
・AutoSport 1977年11月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

ニルソンのJPS16はプラクティスでエンジンの燃圧が低下、更にはリアのアンチロールバーが折損するというトラブルに見舞われます。土曜日は途中からスペアカーのJPS18に乗り換えましたがベストタイムはJPS16で記録したものとなり、最終的には今やニルソンにとってはこのポジションでも不満の残る予選5位のグリッドとなりました。そして結局レースでも引き続きJPS18が使われる事となります。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・サイドプレート前下部は丸みを帯びた形状に変更
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
<改訂履歴>
・v1.0(2012/03/26) 新規作成
【FILE 55. 1977 Rd.13 DUTCH GP – August.26-28.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti
参考資料:
・AutoSport 1977年11月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

アンドレッティはこのオランダでは、元々ロータス78が得意とする中速サーキット、しかもマシンのポテンシャルアップも手伝って再びシーズン中盤に見せた好調さを取り戻し、金曜日からマクラーレンのジェームス・ハントをコンマ5秒引き離してトップに立ち、最終的に2位になったリジェのジャック・ラフィーに対してもコンマ6秒の差を付けてポールポジションを獲得します。予選でのアドバンテージとイギリスから3戦連続でのエンジンブローという結果から、アンドレッティは決勝では慎重にスタートし、エンジンを労わって走る作戦に出ます。スタートではその為か、ハントとラフィーに先行されて3番手にポジションを落とします。しかしアンドレッティは落ち着いてラフィーとの差を詰めると3周目にパス、そして5周目に入った時にはハントのテールを捉え、そしてついに6周目のタルザン・コーナーでアンドレッティはアウトからハントにオーバーテイクを仕掛けます。しかしハントはアンドレッティにスペースを与えずアウト側へ寄せた為にコーナー出口で2台は接触、アンドレッティの右フロントタイヤに乗り上げてマシンが宙に浮いたハントは左リアサスペンションを壊してリタイア、アンドレッティはダメージは免れたもののスピンを喫してラフィー、そしてフェラーリのニキ・ラウダとカルロス・ロイテマンに抜かれて4位に後退します。それでもアンドレッティは9周目にロイテマンを抜き返して3位、そして13周目にはラウダをハントと同じ場所でアウトから抜き返して2位に浮上、トップのラフィーに迫ります。しかしその直後の14周目にまたもニコルソンDFVがブロー、これでアンドレッティは4戦連続エンジンブローでのリタイアという結果になりました。その後ピットに戻ったアンドレッティを怒りのハントが出迎えて口論が発生、しかもその後二人を待っていたのはラウダの優勝により、共にタイトルの可能性がほぼ消滅したという現実で、まさに両者痛み分けという結果になりました。そして度重なるエンジンブローに業を煮やしたアンドレッティはチーム・ロータスとの翌1978年への契約更新を渋り、フェラーリへの移籍を仄めかすまでに至りました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドプレート前下部は丸みを帯びた形状に変更
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入
<改訂履歴>
・v1.0(2012/03/26) 新規作成
【FILE 56. 1977 Rd.13 DUTCH GP – August.26-27.1977】 v1.0
JPS18(78/4) Driver: Mario Andretti
参考資料:
・AutoSport 1977年11月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の先端が丸くなっている新形状
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・サイドプレート前下部は丸みを帯びた形状に変更
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
<改訂履歴>
・v1.0(2012/03/26) 新規作成
【FILE 57. 1977 Rd.13 DUTCH GP – August.28.1977】 v1.0
JPS18(78/4) Driver: Gunnar Nilsson
参考資料:
・AutoSport 1977年11月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」

決勝を5位からスタートしたニルソンはスタートでティレルのロニー・ピーターソンに先行されましたが、ハント、アンドレッティが消え、そしてバトルを展開していたピーターソンが電気系統のトラブルで後退するとニルソンは4位に浮上、そしてペースアップしてラフィー、ラウダ、ロイテマンが争うトップ集団に追い付き、25周目にはロイテマンのテールを捉えます。しかしニルソンのJPS18はブレーキに不調が発生してしばしばロックする様になり、ロイテマンに詰め寄るもののブレーキング勝負に持ち込む事が出来ずに膠着状態が続きました。そして35周目のパノラマ・シケインの入口でJPS18はブレーキがまたもロックしてニルソンはスピン、ロイテマンのリアウィングをヒットした後にサンドトラップに捕まってリタイアとなり、これでニルソンも3戦連続のリタイアとなりました。
<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、カギ部分が折れ曲がっていない新タイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・サイドプレート前下部は丸みを帯びた形状に変更
・右側キルスイッチのデザイン変更
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
<改訂履歴>
・v1.0(2012/03/26) 新規作成