EBBRO 1/20 Lotus72E製作? Vol.12


今回はエッチングパーツ製作の第2回目、1回目の顛末から試作品の完成までです。

最初に前回のトライの結末から。結果はご覧の様な大失敗。何をどうやったらこんな状態になるのか不思議な程だが、敢えてここは後を振り返らずにリベンジを期す事に。

先ずは版下を作り直す。前回の失敗はエッチング液が少な過ぎた為に飽和状態に達してエッチング処理が進まず、そうこうして居る間に焼き付けたパターンが無用な腐蝕を起こしたのが原因なので、今回はエッチング液をしっかり使い、その分一度に多くのパーツを制作出来る様にした。ポイントはエッチング液の飽和を抑える為、エッチングさせる部分の面積を最小限に抑える様にした事。版下が完成したら前回同様にレーザープリンタで出力。この時印刷濃度を可能な限り濃くするのがポイント。

版下の表裏が寸分の狂い無く合わせられる様、版下には位置合わせの為のトンボを設ける。表裏を合わせる為にはライトボックス等を使うとやり易い。幸い自分のデスクはガラステーブルの様になっているので、ここに秋葉原で\1,500程度で購入した蛍光灯風のLEDライトを固定してライトボックスの機能を果たせる様に改造した。

版下の表裏を合わせたら前回同様にエッチング処理する金属板(今回は厚さ0.2mmの洋白板を使用)を挟み込んで固定してラミネーターに掛け、その後ぬるま湯に浸けて紙部分を除去する。この時エッチングさせる部分の紙をしっかり除去するのは当然だが、パターン部分は紙をしっかり除去しつつもパターンに傷を付けたりしない様に注意する。もしパターンが欠けてしまったりした場合はフェルトペン等でタッチアップしておく。

エッチング処理の前にパターンの印刷範囲外になった金属板外側部分をエッチングしてしまわない様にマスキングテープで覆う。またこの時、エッチング処理時に金属板を手で引き揚げられる様にビニール紐を取り付けてみた。これでエッチング前の作業は完了。

エッチング作業には、参考にしているF式のページでは通常のプラスチック容器を使用しているが、ここはひとつ必勝態勢を敷く為に専用のエッチング器具を購入する事に。購入したのは最も手頃なサンハヤト社製卓上エッチング装置ES-10同社製セラミックヒーターKTS-210。実売価格はそれぞれ\8,000程度。安くない出費だがエッチングパーツが自作出来ると今後何かと便利だし、その為の投資と割り切る。

エッチング液はやはりサンハヤト社製H-1000Aを購入。1ℓ入りの徳用サイズで、しかもエッチング作業で最も気を付けなければならない廃液処理の為の処理剤と処理専用ビニール袋が付属しているのが有り難い。実売価格は\2,800程度。因みに上記エッチング用品は全て秋葉原の千石電商で購入した。エッチングはプリント基板を自作する電子工作マニアには必須の技術で、サンハヤト社もプリント基板用品のメーカーである。千石電商は若かりし頃に東京ラジオデパートと共に電子工作用のパーツを物色する為に足繁く通ったが、まさかこの歳になって模型制作の為にエッチングに手を出すとは当時想像だにしなかった。

その他F式の教えに従い、エッチング液よりも効率の良いエジンバラエッチ液を作る為のクエン酸、洗浄液に使用する重曹、作業用のトレーを100均ショップで、精製水をドラッグストアで買い揃える。

必要な道具が揃ったらいよいよ実作業に取り掛かる。ここもやはりF式の教えに従いエジンバラエッチ液を800cc程作ってエッチング装置に注ぎ入れてヒーターとポンプのスイッチを入れる。液温が40度に達するまでの間に洗浄液を作ってスタンバイし、液温が40度になったらいよいよ金属板を装置に投入する。

投入後もタイミングを見て金属板を引き上げてエッチング状態をチェック。時間は金属板の厚さやエッチング液の飽和状態によりまちまちだが、今回のケースではおよそ10分後にエッチング部分が抜け始めた。

エッチング部分が抜け始めたら慎重に進行状態をチェックしながら残り部分のエッチングを進める。場合によっては1枚の金属板でも一部のパーツはエッチングが終わって脱落しかかっているのに一部のパーツはまだエッチング部分が抜け切らない、なんて事もある。脱落しそうなパーツは装置の底に落としてしまわない様に早めに外してしまう。

投入よりおよそ15分後、エッチング処理が完了したら金属板を装置から引き上げて洗浄液に入れる。この時パターンが溶けて剥がれる事もあるが、気にせず先へ進む。

洗浄液から泡が出なくなったら水洗いし、マスキングテープを剥がす。金属板に焼き付けた黒いパターン部分は洗浄液に浸けた段階で有る程度勝手に剥がれるが、残った部分は我々モデラーが通常使っているシンナーやペイントリムーバー等を使って溶かし落とす。

右側はパターンを溶かし終えた状態。当初懸念された両面エッチングの表裏のズレによるパターンの不整合も無く、またディティールも直径1mm以下の穴や微細なパターン等もしっかり再現されているが、この2枚は元々の洋白板の輝きは失われて表面が錆びたかの様にドス黒くなっているのが判る。これはエッチング液が飽和状態に近づいてしまった為に処理に時間が掛かる様になり、その間にパターンからエッチング液が浸透して表面に腐蝕を発生させてしまう為。こうなったらもし元の金属板の質感を活かしたい場合や表面を平滑にしたい場合は表面をペーパーとコンパウンドで磨いてやる必要があるが、当然この表面の腐蝕は少ない方が作業が楽である。事実次の写真の物はエッチング液が新しい状態だった為に表面の腐蝕が少なく、コンパウンドを付けた布で擦るだけで洋白板の輝きが蘇った。

一部のパーツが途中で脱落しているものの、こちらが出来上がったエッチングパーツ。一部まだ磨き足りないがほぼ元の洋白板の輝きを取り戻していて、パターンの巧拙はあるものの見た目の精度はほぼ市販のエッチングパーツと遜色無いクオリティに仕上がった。

かくして自作エッチングパーツを作るというチャレンジは幾らかの苦労を経て完成を見ました。当初は「本当に自分に出来るのか?」という疑問からネットリサーチをしてみると、今回参考にしたF式をはじめ多くの先人達が述べていた事は「やってみると意外と簡単」という事で、これは自分も感じた事でした。今回自分は今後の為の投資と思い器具を購入しましたが、ワンオフで作るのであれば本格的な器具は必要ありませんし、コストもそれ程掛かるものではありません。そして何より出来上がった時の満足感は高いものでしたし、今後同様にエッチングパーツが必要になった際に使える技術を習得したという事が個人的には大きかったです。

– END –


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