Lotus78 History & Markings – Vol.17 1977 Rd.10 British GP


今回はシルバーストーンで行われた1977年第10戦イギリスGP(7月16日決勝)でのロータス78についてです。現在は改修に改修を重ねた結果、中速テクニカルサーキットの性格が強くなったシルバーストーンですが、1991年に本格改修される迄は、(当時の)最終ウッドコート・コーナーに緩いシケイン(1986年に本格的なシケインに改修)があっただけで、それ以外は長短8本のストレートを単純なコーナーで繋げた超高速コースでした。直前に同サーキットで行われたテストでは、マリオ・アンドレッティが最速タイムをマークしていたものの、チームもドライバーも高速サーキットでのレースでは苦戦を予想していました。

写真:1977年イギリスGP序盤(LAP5/68頃)、ホームストレートでトップ4台を追うマリオ・アンドレッティのJPS17(右)とグンナー・ニルソンのJPS16(中央)。直後はデビュー戦でマクラーレンの旧型車M23を駆るジル・ヴィルヌーブ。予選でアンドレッティを上回ったニルソンだったが、チームオーダーによりアンドレッティにポジションを譲り走行を続ける事になる。アンドレッティのマシンは車高が上がってボトム部分に地面と大きな空間が出来ているのに対し、ニルソンのマシンはボトムが接地しそうな程に車高が低くなっているのが興味深い。(Motors TV


【FILE 42.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13-16.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
いつも通り、最初に紹介するのはグンナー・ニルソンのレースカーJPS16。タバコ広告禁止のイギリスでのレースに対応し、John Player Specialの文字とJPSロゴが消されています。また、超高速のシルバーストーンに対応して、リアウィングは延長フラップが撤去されたローダウンフォース仕様となっています。また、アンドレッティのマシンにはリアウィングにウィニング・ローレルが記入されていますが、ニルソンのマシンにはこのレースでも記入されていない様です。
ニルソンはトラブル続きだったアンドレッティとは対照的にプラクティスをトラブルフリーで順調にこなし、予選結果でも今シーズン初めてアンドレッティを上回る5位を獲得します。レースではチームオーダーに従ってアンドレッティを先行させ6位に着けて走行を続けましたが、30周目を過ぎた頃からアンドレッティのエンジンからオイルが噴き始め、ニルソンはそのオイルを被りながらの走行を強いられる事になります。トップを走るブラバムのジョン・ワトソンが燃料系のトラブルで48周目にピットインした直後の53周目、ヘルメットのバイザーが汚れ切ったニルソンは遂にアンドレッティをパスして4位に浮上、3位を走るウルフのジョディ・シェクターに対して猛チャージを開始します。そのシェクターは59周目にエンジンがブロー、次のターゲットはブレーキに問題を抱えてペースを上げられないフェラーリのニキ・ラウダとなります。ベルギーGPとフランスGPでラウダ攻略に成功していたニルソンは1周1秒速いラップでラウダに迫りましたが、今度ばかりはラウダが逃げ切ってニルソンは3位でチェッカーを受けました。アンドレッティがリタイアしたレースで、ニルソンはセカンドドライバーとしてチームに貴重なポイントを献上、そしてベルギーGPでの優勝がフロックではなかった事を証明したレースでした。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のウイニング・ローレル無し


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 43.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.15.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
やや番外編的になりますが、こちらはプラクティスで見られたアンドレッティのJPS17。ポイントはコクピットカウルの開口部直前に「MARIO RULES OK!」と書かれたステッカーが貼付されています(ディティールはA BOOKSHELFさんのページ参照)。どの段階でこのマークが追加されていたかは定かではありませんが、Hamlyn Publishing刊「Mario Andretti – World Champion」P66に掲載されている金曜のプラクティスでコースオフした際の写真にはこのマークは見当たらず、日曜のレースの写真でも見当たらない事から、土曜日のプラクティスではないかと推定しています。また、フランスGPでの優勝を反映してリアウィングのウィニング・ローレルが一つ増えて4つとなっています。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・コクピットカウル前部に「MARIO RULES OK!」のステッカー添付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 44.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13-16.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが金曜のプラクティス、および決勝時と思われるJPS17の姿です。FILE.43で紹介したコクピットカウル前部の「MARIO RULES OK!」のマークは無く、また他のマーキング同様にタバコ広告禁止のイギリスに対応してJohn Player Specialの文字とJPSロゴ無しとなっています。リアウィングのウィニング・ローレルはFILE.43と同様です。また金曜、土曜はコスワースのスペシャルDFVを使用したアンドレッティでしたが、日曜の決勝ではニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用しました。
冒頭にも述べた通り、事前から苦戦を予想していたアンドレッティでしたが、金曜のプラクティスから予想を超えて次々に訪れる不運と不調に苦しむ事になります。まず金曜にはアンドレッティの目の前を走っていたサーティーズのヴィットリオ・ブランビッラがエンジンブロー、白煙を避けようとしたアンドレッティはたまらずコースオフしてランオフエリアの草地に突っ込み、サイドスカートの効果で高速芝刈機と化したJPS17はそこでスタックして走行不能となります。ニルソンのマシンに相乗りしてピットに戻ったアンドレッティはニューシャシーのJPS18を引っ張り出しますが、こちらは間もなくギアボックスにトラブルが発生して使い物にならず、さらに土曜日には修復なったJPS17のセットアップが決まらず、最後はコスワースのスペシャルDFVが不調になり、結局予選結果は6番手に沈みました。日曜の決勝ではエンジンをニコルソンのDFVに積み替えたもののアンドレッティには引き続き冴えが見られず、スタートでニルソンにポジションを譲られて5位に浮上しますが、レース中盤を過ぎた頃からエンジンからオイルが噴き始め、53周目にニルソンにポジションを明け渡した後、62周目に最終的にエンジンがブローしてリタイア(記録上は15位完走扱い)となりました。ポイントランキングを争うラウダが2位でフィニッシュした為、アンドレッティにとってはまたしても痛いノーポイントとなりました。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 45.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13.1977】 v1.1
JPS18(78/4) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
最後に紹介するのは、このイギリスGPにスペアカーとして持ち込まれたニューシャシーのJPS18。スペインGPの項で紹介したセンターマウント式のリアウィングを搭載していますが、ウィング本体は高速のシルバーストーンに合わせて延長フラップが撤去された低ダウンフォース仕様です。このセンターマウントですが、ニューシャシーの為テストというよりはシェイクダウンの要素が強く、たまたま使えるパーツだったので付けた程度のものと思われます。フロントウィング翼端板はJPS16に近い舟形ですが、下部分がやや丸みを帯びているのが特徴です。またフロントノーズのカーナンバー5はFILE.24および26で紹介したカギ部分が出ている旧タイプを使用、ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプですがドライバー名は記入されていません。またインダクションボックスのKONIロゴですが、写真のアングルのせいかも知れませんが一応未記入に見えます。リアウィングのウィニング・ローレルも記入されていますが、それぞれの間隔が一定ではないのが注意点です。
JPS18はモノコックのパネルを薄くする事により軽量化が図られましたが、残念ながらアンドレッティはこのシャシーがあまり気に入らず、以後スペアカー及びニルソンのレースカーとして使用されます。このイギリスGPでは金曜にレースカーのJPS17をコースオフさせたアンドレッティが午後に使用しますが、程なくしてギアボックスが壊れ、その後は使用されませんでした。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、スペインGPプラクティスで使用されたタイプ
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・ドライバー名なし
・ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプ
・インダクションボックスのKONIロゴなし(推定)
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成
・v1.1(2012/02/10) 使用レースに関する記述を修正


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

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