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Lotus78 History & Markings – Vol.18 1977 Rd.11 German GP


今回はホッケンハイムで行われた1977年第11戦西ドイツGP(7月31日決勝)でのロータス78について取り上げます。前回のシルバーストーン同様、ホッケンハイムも2001年のGPを最後に大改修を受けて大きくその性格を変えましたが、1977年当時は第一コーナーからスタジアムセクションに至るまでほぼ半楕円形で、行きと戻りのストレートに2つの緩いシケインがあるのみの超高速コースでした。超低速のスタジアムセクションのお陰で平均速度はシルバーストーンよりも低いものの、エンジンの全開時間は1周全体の60%以上に及ぶ、非常にエンジンに過酷なサーキットでした。コーナリングマシンであるロータス78は、スタジアムセクションで抜群の速さを見せたものの、トップスピードの不足は如何ともし難く、前戦同様にこのレースでも苦戦を強いられました。

写真:1977年西ドイツGP決勝(LAP34/47)、スタジアムセクション入口のアジップ・カーブでリタイアしたマリオ・アンドレッティとJPS17(手前)。左は22周目にリタイアしたパトリック・デパイエのティレルP34と31周目にリタイアしたグンナー・ニルソンのJPS18。原因は3台ともエンジン・トラブルで、このレースでは完走は24台中10台、内6台(9位完走扱いとなったティレルのロニー・ピーターソンを含む)がエンジン・トラブルと、改めてサーキットの過酷さを示す結果となった。(ZDF


【FILE 46.1977 Rd.11 GERMAN GP – July.29-30.1977】 v1.1
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年10月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
グンナー・ニルソンのレースカーであったJPS16。イギリス同様西ドイツも、ヨーロッパではいち早くタバコ広告が禁止された国であり、マシンのマーキングはJohn Player Specialのロゴが消された仕様が引き続き使用されましたが、特徴としてフロントノーズのカーナンバー右下部分に、ディティールは不明ですが車検合格証と思われる赤いステッカーが貼付されています。サーキットもシルバーストーン同様の超高速コースな為、リアウィングもイギリス同様のローダウンフォース仕様となっています。また、今回もリアウィングのウィニング・ローレル記入の有無が確認出来る写真に恵まれません(リアウィングが寝かされている為)でしたが、一応イギリス同様の未記入としておきます。
ニルソンはトップスピードの不足に悩みながらも金曜のセッションでは6~7番手に着け、今回もトラブル続きだったマリオ・アンドレッティよりも順調にセッションをこなしましたが、土曜の最終セッションでエンジンがブローし、スペアカーのJPS18に乗り換えたものの最終的には9番手のグリッドとなりました。しかし日曜のレースに向けてエンジンを積み替えようとしたところ、エンジンのマウント部分にクラックが入っている事が判明した為、ニルソンはスペアカーのJPS18(※)でレースに臨む事になりました。
※ニルソンがレースで使用したマシンに関して、資料によってJPS16とするものとJPS18とするものが混在しています。筆者の参考文献でもJohn Typler著「Lotus 78 & 79 – The Ground-Effect Cars」ではJPS16、Bruce Grant-Braham著「Lotus – A Fomula One Team Hsitory」ではJPS18としており、見解が分かれています。本稿では上記AutoSport誌/Jeff Hutchinson氏のレポートを根拠に、JPS18がレースで使われたとしておきます。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のウイニング・ローレル無し


<改訂履歴>
・v1.0(2012/02/10) 新規作成
・v1.1(2012/03/05) 車検合格証のステッカーに関する記述を追加


【FILE 47.1977 Rd.11 GERMAN GP – July.29-31.1977】 v1.1
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年10月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
マリオ・アンドレッティのJPS17も、基本的には前戦イギリスGPと同様のマーキングですが、こちらのマシンは車検合格証の赤いステッカーが、コクピットカウルの開口部直前に貼付されています。尚、アンドレッティはこのレースではコスワースのスペシャルDFVを使用しています。
アンドレッティはホッケンハイムでも本調子とは程遠く、金曜午前はハンドリング不調に悩まされた上、縁石を乗り越えた際にサスペンションにダメージを与えてしまいます。チームは徹夜でマシンの修復とチェックを行った結果、コーナーウェイトを調整して土曜日のセッションに臨みましたが、今度はベルハウジング・ケーシングにクラックが入ってしまい、結局予選結果は7位に留まりました。レースではスタートで7位をキープしたものの、やはりトップスピードの不足に悩まされてトップグループのバトルに全く付いて行けず、6位を走るフェラーリのカルロス・ロイテマンとのバトルを延々と展開する事になります。スタジアム・セクションでは圧倒的なスピードでロイテマンに迫るものの、ストレートでは12気筒パワーのフェラーリに瞬く間に引き離されるという繰り返しの結果、アンドレッティのスペシャルDFVは34周目に息絶えてリタイアとなりました。このレースではポイントリーダーであったフェラーリのニキ・ラウダが優勝したため、脇役にもなれずに連続ノーポイントに終わったアンドレッティはタイトル争いでラウダに大きく引き離される事になりました。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・コクピットカウル前部に赤ステッカー添付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/02/10) 新規作成
・v1.1(2012/03/05) 車検合格証のステッカーに関する記述を修正


【FILE 48.1977 Rd.11 GERMAN GP – July.30.1977】 v1.1
JPS18(78/4) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年10月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
FILE.46でも触れた通り、ニルソンは土曜のセッションでレースカーであるJPS16のエンジンをブローさせ、スペアカーのJPS18に乗り換えました。これはその時と思われる姿で、特徴的なポイントとして、リアウィングはシルバーストーンの時に使用されたセンターマウント式から、シーズン初期に使用されたタイプに変更されており、丸みを帯びた旧型の翼端板と支持架を使用している事が見て取れます。フロントノーズの車検合格証ステッカーはJPS16からそのままですが、左サイドウィングのカーナンバー6はベルギーGPでのJPS15(FILE.33)と同様にステッカーを利用してフロントノーズ用のカギ部分が折れ曲がったタイプを使用しています(右側は推定)。その他ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプ、そしてドライバー名は記入されていません。インダクションボックスのKONIロゴについては写真が遠い為に不明ですが、これまでの例に準じて未記入としておきます。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・左側サイドウィングのカーナンバーはフロントノーズ用を代用(右側は推定)
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・ドライバー名なし
・ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプ
・インダクションボックスのKONIロゴなし(推定)
・リアウィング上面のウイニング・ローレル無し


<改訂履歴>
・v1.0(2012/1/20) 新規作成
・v1.1(2012/03/05) 車検合格証のステッカーに関する記述を追加


【FILE 49.1977 Rd.11 GERMAN GP – July.31.1977】 v1.0
JPS18(78/4) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年10月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらがニルソンが決勝でドライブしたJPS18の姿。エンジンが決勝用に換装されただけでなく、ニルソン用にフロントノーズ、ロールバーとリアウィングがJPS16から移植された上、ドライバー名のNissonの文字も新たに追加され、インダクションボックスのKONIロゴも確認出来ます。左サイドウィングのカーナンバー6はFILE.48と同様の状態ですが、右側は標準的な書体が利用されています。リアウィングのウィニング・ローレルはやはり記入されていない模様です。
このレースで予選9番手だったニルソンはスタートでポジションを1つ上げ、チームメイトのアンドレッティに続く8番手に着けましたが、オープニングラップの戻りのストレートでエンサインのパトリック・タンベイ、サーティースのヴィットリオ・ブランビッラ、マクラーレンのヨッヘン・マスに次々とパスされて11位にまで後退します。その後もアンドレッティ同様にペースを上げられないまま、31周目にアンドレッティ同様にエンジンが壊れ、リタイアとなってしまいました。
この頃、ベルギーでの初優勝や上位入賞により注目を集める存在となったニルソンは、シャドウと翌1978年シーズンの契約を交わし(その後シャドウから分裂したアロウズが、契約をさらう)、その後釜として同郷の先輩であるロニー・ピーターソンのチーム・ロータスへの復帰が濃厚となっていました。ニルソンはエースドライバーとして更なる飛躍が期待されましたが、しかしこの時、既に彼の身体は癌に侵され始めていました。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・左側サイドウィングのカーナンバーはフロントノーズ用を代用(右側は標準タイプ)
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のウイニング・ローレル無し


<改訂履歴>
・v1.0(2012/02/20) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.17 1977 Rd.10 British GP


今回はシルバーストーンで行われた1977年第10戦イギリスGP(7月16日決勝)でのロータス78についてです。現在は改修に改修を重ねた結果、中速テクニカルサーキットの性格が強くなったシルバーストーンですが、1991年に本格改修される迄は、(当時の)最終ウッドコート・コーナーに緩いシケイン(1986年に本格的なシケインに改修)があっただけで、それ以外は長短8本のストレートを単純なコーナーで繋げた超高速コースでした。直前に同サーキットで行われたテストでは、マリオ・アンドレッティが最速タイムをマークしていたものの、チームもドライバーも高速サーキットでのレースでは苦戦を予想していました。

写真:1977年イギリスGP序盤(LAP5/68頃)、ホームストレートでトップ4台を追うマリオ・アンドレッティのJPS17(右)とグンナー・ニルソンのJPS16(中央)。直後はデビュー戦でマクラーレンの旧型車M23を駆るジル・ヴィルヌーブ。予選でアンドレッティを上回ったニルソンだったが、チームオーダーによりアンドレッティにポジションを譲り走行を続ける事になる。アンドレッティのマシンは車高が上がってボトム部分に地面と大きな空間が出来ているのに対し、ニルソンのマシンはボトムが接地しそうな程に車高が低くなっているのが興味深い。(Motors TV


【FILE 42.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13-16.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
いつも通り、最初に紹介するのはグンナー・ニルソンのレースカーJPS16。タバコ広告禁止のイギリスでのレースに対応し、John Player Specialの文字とJPSロゴが消されています。また、超高速のシルバーストーンに対応して、リアウィングは延長フラップが撤去されたローダウンフォース仕様となっています。また、アンドレッティのマシンにはリアウィングにウィニング・ローレルが記入されていますが、ニルソンのマシンにはこのレースでも記入されていない様です。
ニルソンはトラブル続きだったアンドレッティとは対照的にプラクティスをトラブルフリーで順調にこなし、予選結果でも今シーズン初めてアンドレッティを上回る5位を獲得します。レースではチームオーダーに従ってアンドレッティを先行させ6位に着けて走行を続けましたが、30周目を過ぎた頃からアンドレッティのエンジンからオイルが噴き始め、ニルソンはそのオイルを被りながらの走行を強いられる事になります。トップを走るブラバムのジョン・ワトソンが燃料系のトラブルで48周目にピットインした直後の53周目、ヘルメットのバイザーが汚れ切ったニルソンは遂にアンドレッティをパスして4位に浮上、3位を走るウルフのジョディ・シェクターに対して猛チャージを開始します。そのシェクターは59周目にエンジンがブロー、次のターゲットはブレーキに問題を抱えてペースを上げられないフェラーリのニキ・ラウダとなります。ベルギーGPとフランスGPでラウダ攻略に成功していたニルソンは1周1秒速いラップでラウダに迫りましたが、今度ばかりはラウダが逃げ切ってニルソンは3位でチェッカーを受けました。アンドレッティがリタイアしたレースで、ニルソンはセカンドドライバーとしてチームに貴重なポイントを献上、そしてベルギーGPでの優勝がフロックではなかった事を証明したレースでした。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー6はカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のウイニング・ローレル無し


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 43.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.15.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
やや番外編的になりますが、こちらはプラクティスで見られたアンドレッティのJPS17。ポイントはコクピットカウルの開口部直前に「MARIO RULES OK!」と書かれたステッカーが貼付されています(ディティールはA BOOKSHELFさんのページ参照)。どの段階でこのマークが追加されていたかは定かではありませんが、Hamlyn Publishing刊「Mario Andretti – World Champion」P66に掲載されている金曜のプラクティスでコースオフした際の写真にはこのマークは見当たらず、日曜のレースの写真でも見当たらない事から、土曜日のプラクティスではないかと推定しています。また、フランスGPでの優勝を反映してリアウィングのウィニング・ローレルが一つ増えて4つとなっています。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・コクピットカウル前部に「MARIO RULES OK!」のステッカー添付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 44.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13-16.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらが金曜のプラクティス、および決勝時と思われるJPS17の姿です。FILE.43で紹介したコクピットカウル前部の「MARIO RULES OK!」のマークは無く、また他のマーキング同様にタバコ広告禁止のイギリスに対応してJohn Player Specialの文字とJPSロゴ無しとなっています。リアウィングのウィニング・ローレルはFILE.43と同様です。また金曜、土曜はコスワースのスペシャルDFVを使用したアンドレッティでしたが、日曜の決勝ではニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用しました。
冒頭にも述べた通り、事前から苦戦を予想していたアンドレッティでしたが、金曜のプラクティスから予想を超えて次々に訪れる不運と不調に苦しむ事になります。まず金曜にはアンドレッティの目の前を走っていたサーティーズのヴィットリオ・ブランビッラがエンジンブロー、白煙を避けようとしたアンドレッティはたまらずコースオフしてランオフエリアの草地に突っ込み、サイドスカートの効果で高速芝刈機と化したJPS17はそこでスタックして走行不能となります。ニルソンのマシンに相乗りしてピットに戻ったアンドレッティはニューシャシーのJPS18を引っ張り出しますが、こちらは間もなくギアボックスにトラブルが発生して使い物にならず、さらに土曜日には修復なったJPS17のセットアップが決まらず、最後はコスワースのスペシャルDFVが不調になり、結局予選結果は6番手に沈みました。日曜の決勝ではエンジンをニコルソンのDFVに積み替えたもののアンドレッティには引き続き冴えが見られず、スタートでニルソンにポジションを譲られて5位に浮上しますが、レース中盤を過ぎた頃からエンジンからオイルが噴き始め、53周目にニルソンにポジションを明け渡した後、62周目に最終的にエンジンがブローしてリタイア(記録上は15位完走扱い)となりました。ポイントランキングを争うラウダが2位でフィニッシュした為、アンドレッティにとってはまたしても痛いノーポイントとなりました。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成


【FILE 45.1977 Rd.10 BRITISH GP – July.13.1977】 v1.1
JPS18(78/4) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
最後に紹介するのは、このイギリスGPにスペアカーとして持ち込まれたニューシャシーのJPS18。スペインGPの項で紹介したセンターマウント式のリアウィングを搭載していますが、ウィング本体は高速のシルバーストーンに合わせて延長フラップが撤去された低ダウンフォース仕様です。このセンターマウントですが、ニューシャシーの為テストというよりはシェイクダウンの要素が強く、たまたま使えるパーツだったので付けた程度のものと思われます。フロントウィング翼端板はJPS16に近い舟形ですが、下部分がやや丸みを帯びているのが特徴です。またフロントノーズのカーナンバー5はFILE.24および26で紹介したカギ部分が出ている旧タイプを使用、ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプですがドライバー名は記入されていません。またインダクションボックスのKONIロゴですが、写真のアングルのせいかも知れませんが一応未記入に見えます。リアウィングのウィニング・ローレルも記入されていますが、それぞれの間隔が一定ではないのが注意点です。
JPS18はモノコックのパネルを薄くする事により軽量化が図られましたが、残念ながらアンドレッティはこのシャシーがあまり気に入らず、以後スペアカー及びニルソンのレースカーとして使用されます。このイギリスGPでは金曜にレースカーのJPS17をコースオフさせたアンドレッティが午後に使用しますが、程なくしてギアボックスが壊れ、その後は使用されませんでした。

<外観上の特徴>
・JPSロゴ無し
・フロントノーズのカーナンバー5は、スペインGPプラクティスで使用されたタイプ
・フロントウィング翼端板はやや丸い舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・ドライバー名なし
・ロールバーはアンドレッティ用の背の低いタイプ
・インダクションボックスのKONIロゴなし(推定)
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP、フランスGP:計4個)


<改訂履歴>
・v1.0(2012/01/17) 新規作成
・v1.1(2012/02/10) 使用レースに関する記述を修正


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.16 1977 Rd.09 French GP


今回はディジョン-プレノワで行われた1977年第9戦フランスGP(7月3日決勝)でのロータス78について取り上げます。既にこのシーズン最速マシン+最速ドライバーの組み合わせとなったロータス78+マリオ・アンドレッティは、前回スウェーデンGPでは不運に見舞われたものの、逆にこのフランスGPでは逆に我慢のレースを続けた結果、最後に幸運が訪れる事になります。

写真:1977年フランスGPファイナルラップ(LAP80/80)、レースも残り半周を切った時点でジョン・ワトソンのブラバムBT45のインを差してトップに浮上したマリオ・アンドレッティのJPS17。ここまでアンドレッティの猛攻をしのぎ続けてきたワトソンだったが、最終ラップにガス欠に見舞われ、目前の勝利を逃してしまう。逆に前戦スウェーデンGPをガス欠で落としたアンドレッティには、その不運を取り返す勝利となった。(ZDF


【FILE 38.1977 Rd.09 FRENCH GP – June.1-3.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年9月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
先ずグンナー・ニルソンのレースカーであるJPS16。中速でアップダウンの激しいディジョンに対応し、リアウィングは再びフラップが延長され、John Player Specialの文字は延長フラップ側に記入されています。その他以前にA BOOOKSHELFさんからのコメントに有った通り、コクピットカウルのNACAダクトにはチューブ形のダクトが装備されています。前戦スウェーデンGPではニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用したニルソンでしたが、このレースでは外見を見る限り、通常型のコスワースDFVに戻ったものと思われます。またFILE.41で後述しますが、このレース(恐らく決勝時)からチーム・ロータスはリアウィング上面にシーズン中の優勝を示すウイニング・ローレル(月桂樹のデザイン内に優勝レース名を白文字で記入したもの)を記入しています。しかしニルソンのマシンにその有無を確認出来る写真が無く、その状態は不明です。
スペインGPでの5位入賞から始まり、ベルギーGPでの優勝を経て完全に自信を付けたニルソンは、プラクティスから縁石カットやフルカウンターを多用した得意の(アンドレッティとは対照的な)アグレッシブなドライビングで攻めまくり、初日午前はトップのアンドレッティに続く2番手、最終結果でもポールポジションを獲得したアンドレッティとコンマ5秒差で、ベルギーと並ぶ自己最高タイの予選3位に着けました。しかし決勝直前にストレートスピードの向上を狙ってリアウィングをやや後方にオフセットするセッティング変更を行った事が裏目に出てしまい、オーバーステアの上にストレートスピードも伸びない、という二重苦に陥ります。ニルソンはスタートでダッシュを決めたブラバムのジョン・ワトソンとリジェのジャック・ラフィーに先行されて5位に後退すると、前方を走るアンドレッティは難無くラフィーをパスしたものの、ニルソンはずっとラフィーを抜く事が出来ずに苦しみ、レース中ずっとセッティング変更した事を悔やむ事になります。ニルソンは先行するラフィーと後方から迫るフェラーリのニキ・ラウダを含めた4位争いを展開しますが、61周目にラフィーが周回遅れとなったブラバムのハンス-ヨアヒム・シュトゥックに進路を塞がれた隙を突いてパス、ラウダを3秒差で抑えて4位入賞を果たしました。全体的に健闘は見せたものの、ニルソンにとってはやや悔いの残るレースとなってしまいました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/31) 新規作成


【FILE 39.1977 Rd.09 FRENCH GP – June.1-2.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
アンドレッティのJPS17も、基本的には中速のディジョンに合わせたリアウィングの変更以外、大きなモディファイは無くフランスGPを迎えますが、アンダーストープでは左右で異なっていたカーナンバーはベルギーで登場したカギ部分の丸いタイプに戻されています。尚、FILE.41で詳述しますがこの時点ではリアウィング上のウイニング・ローレルが記入されておらず、ウイニング・ローレルは週末のどこか途中で記入されたか、リアウィングの交換作業を行ったか、のいずれかと思われます。またエンジンのカムカバー部分にニコルソン-マクラーレンのロゴが確認出来る写真が無い事から、このレースではアンドレッティはコスワースのスペシャルDFVを引き続き使用した物と思われます。
既にスペインGP以降の4戦中、モナコを除く3戦でポールポジションを奪っているアンドレッティは、猛暑に見舞われたディジョンでも好調を維持、金曜午前はトップ、しかもニルソンとのワン・ツーでロータス78の速さを誇示します。午後にはワトソンにトップを奪われるものの土曜には再びトップを奪還し、3戦連続のポールポジションを獲得します。因みに土曜日のベストラップは直前に降ったにわか雨で路面温度が下がったタイミングを見計らって決めた、速さだけでなく頭脳プレーも見せた走りでした。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバーは左右共に新タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/31) 新規作成


【FILE 40.1977 Rd.09 FRENCH GP – June.1.1977】 v1.1
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらは番外編的内容ですが、恐らく金曜日のピットで見られたJPS17の姿。両サイドウィングのカーナンバーが、開幕戦アルゼンチンGPでも見られたのと同様に「6」の一部をテープで塞いで表現しています。但しロールバーの高さやモノコックの長さ、更にドライバー名が入っている事から判断してJPS15でもJPS16でもなく、アンドレッティのレースカーJPS17に一時的にニルソン用JPS16のサイドウィングを装着したものと思われます。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・両サイドウィングのカーナンバーは「6」の一部をテープで塞いで使用
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/31) 新規作成
・v1.1(2012/03/05) サイドウィングのカーナンバーに関する記述を訂正


【FILE 41.1977 Rd.09 FRENCH GP – June.3.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年9月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
日曜日の決勝、スターティンググリッドについたJPS17のリアウィングには、前方から向かって左から第4戦USGPウェスト、第5戦スペインGP、第7戦ベルギーGPでの優勝を示すウイニング・ローレルが計3か所にステッカーで貼付(本稿では今後便宜上「記入」と表現します)されました。FILE.39でも述べた通り記入されていない写真もある為、どのタイミングから記入されたのか、ニルソンのJPS16にもレース時記入されていたのかが現段階では不明です。尚、それ以外にはFILE.39と同じマーキングです。
このレースをポールポジションからのスタートとなったアンドレッティでしたが、スタートでホイールスピンを起こしてしまい、2位からスタートしたジェームス・ハント(マクラーレン)、4位のワトソン、そして5位のラフィーにまでパスされて4位に後退します。しかしベルギーの轍は踏まずとアンドレッティは今回は落ち着いたレース運びを見せ、2周目にはラフィーを抜き返して3位に浮上、その後もじっくりと周回を重ねて18周目にトップから徐々に後退して来たハントをパスして2位に浮上します。この時点で約7秒あったトップのワトソンとの差をアンドレッティは少しずつ詰めて行き、40周目に約5秒、50周目に約3秒となり、65周目頃にはほぼテールtoノーズの状態になります。レースは残り約15周、ワトソンとアンドレッティのマッチレースが展開されますが、アンドレティのDFVはストレートエンドでレブ・リミッターを叩いてしまい12気筒のワトソンをどうしても抜けず、そのままファイナルラップへと突入します。あと1周、ワトソンは最後までアンドレッティを振り切るかと思われましたが、コース中間部のヘアピン状の延長セクションに差し掛かったところで、今回はワトソンのアルファロメオ12気筒がガス欠症状に見舞われます。ワトソンはそれでも必死の抵抗を見せますが、延長セクションの終わりとなる左コーナーでアンドレッティは遂にサイド・バイ・サイドからワトソンのインをこじ開けてパス、トップでチェッカーを受けて今シーズン3勝目を挙げました。そしてアンドレッティはポイントリーダー争いでも遂にトップのラウダに1ポイント差と迫る2位に浮上し、今シーズンのタイトル争い最有力候補に名乗りを上げました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバーは左右共に新タイプ
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入
・リアウィング上面にウイニング・ローレル記入(USGPウェスト、スペインGP、ベルギーGP:計3個)


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/31) 新規作成



ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.15 1977 Rd.08 Swedish GP


今回は1977年6月19日にアンダーストープで決勝が行われた、第8戦スウェーデンGPでのロータス78について取り上げます。前戦のベルギーではグンナー・ニルソンが初優勝、そしてティレルのロニー・ピーターソンが3位と、2人のスウェーデン人が表彰台に上がった直後とあって、サーキットにはベルギーの再現を期待する多くのファンが詰めかけましたが、ニルソンだけでなくチーム・ロータスにとっても不運に見舞われたレースとなってしまいました。

写真:1977年スウェーデンGP決勝序盤、トップを快走するマリオ・アンドレッティのJPS17と周回遅れとなったグンナー・ニルソンのJPS16。ニルソンはオープニングラップでの接触によりピットインを余儀なくされ、ピットアウト時にアンドレッティの前に出たものの直ぐにに先行させ、その後暫くアンドレッティのテールに付けて走行を続け、地元ファンの前で意地を見せた。(アンドレッティのポスター写真より)


【FILE 36. 1977 Rd.08 SWEDISH GP – June.17-19.1977】 v1.3
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年8月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
こちらはグンナー・ニルソンのレースカーであるJPS16。前戦ベルギーではフロントウィング翼端板のJPSストライプが無い状態でしたが、このスウェーデンではJPSストライプが追加されています。また、ゾルダーよりも比較的高速であるアンダーストープに対応し、リアウィングの追加フラップが小型化され、ほぼ通常のガーニーフラップに近い形になっています。この他このスウェーデン独特の特徴として、車検合格を示す円形のステッカーが、コクピットカウル開口部、左側ミラー付根部分に添付されています。またこのレースから、エンジンのキルスイッチの位置を示す「E」マーク(円内に「E」の文字、色は赤)が右側NGKロゴの上方に追加されています。
尚、このレースでニルソンはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用しており、おなじみA BOOKSHELFさんのページにも、ニコルソンDFVを搭載したJPS16のパドックにおける写真が掲載されています(レース中の写真でも確認済)。一般的に言われている説では、ニコルソンDFVはマリオ・アンドレッティのみに供給されていたとされていますが、このレースでアンドレッティは後述するコスワースのスペシャルDFVを使用した事もあり、多分にベルギーでの優勝に対する報償と地元レースという配慮が有った可能性があります。
ベルギーGPでグランプリ・ウィナーの仲間入りを果たして地元に凱旋したニルソンは、ファンからの大歓迎やメディアの取材で多忙なインターバルを過ごしました。プラクティスではスロットルケーブルがスタックするトラブルに見舞われながらも、ニルソンはアンドレッティからコンマ8秒差の予選7位に着け、日曜のレースに期待を持たせました。しかしレースではスタート直後の第一コーナーでマクラーレンのヨッヘン・マスと接触してマシンが浮き上がり、着地した際に今度はティレルのパトリック・デパイエに追突、やがて右フロントウィングを失い早々にピットインを余儀なくされます。すぐさまノーズを修復してコースに戻った際、トップを走るアンドレッティの目の前に出た為、コーリン・チャップマンからのオーダーでアンドレッティに先行させてラップ遅れとなったものの、その後数周にも渡ってアンドレッティのテールに着けて走り続けました。しかし72周のレースも残り僅かになった65周目、ホイールベアリングにトラブルが発生して地元で無念のリタイア(記録上は19位完走扱い)となりました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・コクピットカウル左前方に車検合格証貼付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィングにガーニーフラップ追加、上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/10) 新規作成
・v1.1(2011/12/14) ニコルソンDFVに関する記述を修正(Thanks to A BOOKSHELFさん)
・v1.2(2011/12/14) レースでのニコルソンDFV使用を確認した為、記述及び画像修正
・v1.3(2011/12/26) キルスイッチの「E」マークに関する記述追加、画像修整


【FILE 37. 1977 Rd.08 SWEDISH GP – June.17-19.1977】 v1.2
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年8月15日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
アンドレッティのレースカーであるJPS17は、フロントノーズのカーナンバー5に若干の変更が見られます。「5」のカギ部分根元が斜めにカットされているのは同様ですが、全体的に直線的かつ縦長になり、カギ部分の開口部が更に広がっています。以後アンドレッティのカーナンバー5は、この書体が使われる続ける事になります。また、ニルソンのJPS16では左ミラーの付根部分に添付された車検合格証ですが、このJPS17ではコクピット開口部直前のほぼ中央に添付されている違いがあります。またJPS16同様、右側NGKロゴ上部に「E」マークも追加されています。しかし何より最大の特徴は、サイドプレートのカーナンバー5で、左サイドはベルギーから採用されたカギ部分が丸いタイプですが、右サイドはベルギー以前に使われた角張ったタイプを使用しています。エンジンはプラクティスではニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用したものの(写真でも確認済)、レースではコスワースが新たに開発したスペシャルDFVを使用しています。
ベルギーに引き続き、アンドレッティはこのスウェーデンでもプラクティスから好調で、2戦連続のポールポジションを獲得します。レースでもスタートダッシュを決めると後続を引き離し、ラップ遅れのニルソンを従えて快走、そして独走状態となります。しかしレース中盤以後、アンドレッティはJPS17に搭載されたスペシャルDFVの混合気が次第に濃くなるのを感知し、ガス欠の危険が高まってきた為に残り5周となった所でアンドレッティは給油の為に急遽ピットインします。このトラブルの原因はフューエルメータリングユニット(燃料混合気調節機構:詳細はA BOOKSHELFさんのコメント参照)が、振動によってフルリッチの状態になってしまった為でした(※)。アンドレッティはスプラッシュ&ダッシュでピットを出たものの、その間にアンドレッティの遥か後方にいた2位争いのバトル集団が通り過ぎて行き7位にまで後退、最終的にアンドレッティは6位でフィニッシュしたものの、またしても勝てるレースを落とす結果となりました。おまけにレース後、チームがマシンのチェックを行ったところ、今回グッドイヤーが新たに持ち込んだタイヤのスペックが、週末の間ずっとチャップマンの指定と違った物であった事が判明し、ガス欠の件と相まってチャップマンの怒りに油を注ぐ結果になってしまい、加えてアンドレッティはピットアウトの際にピットレーン出口の赤信号を無視した事により、オフィシャルから罰金を言い渡され、チーム・ロータスにとって何とも後味の悪い週末となってしまいました。
※F1モデリングNo.20ではこのガス欠について、チャップマンがレース前に燃料を抜いて車重を軽くしようとした事が原因だとしていますが、他の文献にはこの様な記述が見当たら無い事から、真偽の程は不明です。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバーは左が新タイプ、右は旧タイプ
・コクピットカウル中央前方に車検合格証貼付
・右側NGKロゴ上部に「E」マーク追加
・リアウィングにガーニーフラップ追加、上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/12/10) 新規作成
・v1.1(2011/12/14) コスワースDFVに関する記述及び画像修正(Thanks to A BOOKSHELFさん)
・v1.2(2011/12/26) キルスイッチの「E」マークに関する記述追加、画像修整


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –


Lotus78 History & Markings – Vol.14 1977 Rd.07 Belgian GP


今回は1977年第7戦ベルギーGP(6月5日決勝)でのロータス78について取り上げます。前戦モナコGPでは今一つ精彩を欠いたロータス78ですが、ゾルダーでは再び圧倒的な速さを見せつけますが、しかしその主役はマリオ・アンドレッティではなくグンナー・ニルソンでした。

写真:1977年ベルギーGP決勝(LAP50/70)、シケイン入口でニキ・ラウダのフェラーリ312T2のインを差し、トップへ浮上したグンナー・ニルソンのJPS16。ウェットからドライへのタイヤ交換に手間取り、大きく後退してしまったニルソンだったが、その後はトップを走っていたラウダよりもラップ2秒も速い激走を見せて次々に順位を上げ、そして初優勝を手中にする。雨絡みのレースでの初優勝とあって、単にラッキーな勝利との印象を受けがちだが、実際には勝者にふさわしい圧倒的な速さを見せつけての優勝であった。(Motors TV


【FILE 32. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.3.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
まず最初に紹介するのは、思わず目を疑いたくなるような姿をしたスペアカーのJPS15。ドライバーはグンナー・ニルソンで、おそらく金曜午前のセッション開始直前の姿と思われますが、急遽スペアカーを持ち出したせいなのか、コクピットカウルにはモナコで記入されていたPARK PALACE MONTE CARLOのロゴが入ったまま、そして何と左サイドウィングのカーナンバーはマリオ・アンドレッティの「5」が記入されています。それ以外の特徴としてはJPS15の特徴である旧パーツのフロントウィング翼端板、平面タイプのサイドウィングのアップスイープ、そしてロールバーはニルソン用の背の高いタイプ、ドライバー名とインダクションボックスのKONIロゴはありません。また、リアウィング翼端板はレースカーと同じタイプの物が使用されています。
ニルソンがこのセッションでスペアカーを使用した理由として、これまでアンドレッティが使用して来たサリスバリー製のノンスリップデフに、デフの利き具合を調節可能にした改良版をテストする目的があったものと考えられます。結局アンドレッティはこの改良版デフを使う事に決めたものの、ニルソンのドライビングにはマッチしなかった為、以後ニルソンは通常のZF製のデフに戻して走行しています。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は楔形タイプ
・コクピットカウルにPARK PALACE MONTE CARLOのロゴ追加
・サイドウィングのアップスイープは平面タイプ
・左側サイドウィングのカーナンバーはアンドレッティの「5」(右側は推定)
・ロールバーはニルソン用の背の高いタイプ
・ドライバー名なし
・インダクションボックスのKONIロゴなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成


【FILE 33. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.4.1977】 v1.0
JPS15(78/1) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
続く土曜日、午前のセッションでニルソンのレースカーであるJPS16のエンジンはブローしてしまい、午後のセッションでは再びJPS15が登場する事になります。しかし今度はコクピットカウルのPARK PALACE MONTE CARLOロゴは消え、そしてフロントノーズはモナコのレースカーと同仕様の物が装着され、翼端板は舟形となっています。サイドウィングのカーナンバーも「6」に変更されましたが、特筆すべきは右側のカーナンバーで、フロントノーズに使用される右上のカギ部分が折れ曲がっているタイプの書体が採用されています。これはスペアカー用にステッカーで用意されていたものと思われ、Model Factory Hiro刊「Lotus 78,79&80」の14ページにはカーナンバーの無いJPS15の右サイドウィングの写真が見られます。また、この書体はシーズンその後もスペアカーを中心に度々見られる事になりますが、注意点として書体の傾斜がユニオンジャックに合わせてあり、それよりも傾斜の大きいカーナンバーは結果として通常よりもやや左側に傾いている事が特徴です。
ニルソンはスペアカーというハンディにも負けずこのセッションで3番手のタイムを記録、自身最上位のグリッドを獲得しましたが、それでもニルソンは不満でフロントローが奪えなかった事を悔しがっていました。実際今回も圧倒的な速さでポールを奪ったアンドレッティとは2秒もの差を付けられていました。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れていないタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ
・サイドウィングのアップスイープは平面タイプ
・右側サイドウィングのカーナンバーはフロントノーズ用を代用
・ロールバーはニルソン用の背の高いタイプ
・ドライバー名なし
・インダクションボックスのKONIロゴなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成


【FILE 34. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.5.1977】 v1.0
JPS16(78/2) Driver: Gunnar Nilsson


参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
決勝にはニルソンのレースカーであるJPS16はエンジンが換装され、レースに臨む事になりました。外見上の特徴はフロントノーズで、カーナンバーは右上のカギが折れているタイプ、フロントウィング翼端板は舟形となっているものの、JPSストライプ無いのが注意点です。また、リアウィングのJohn Player Specialの文字はロングビーチの時と同様のメインエレメント側に記入されているタイプで、JPSストライプの枠に合わせて記入されています。また、雨の決勝では過冷却を防ぐ為にフロントノーズのオイルクーラー左側約1/3をテープで塞いでおり、フロントノーズ取付のファスナー部分もテープで塞がれています。この為この部分のにJPSストライプが途切れて見えるのも特徴です。
雨の決勝で3番手からスタートしたニルソンは、ウルフのジョディ・シェクターにパスされたものの、1周目に発生したブラバムのジョン・ワトソンとアンドレッティとのアクシデントを回避、2位をキープして雨が止むまで走行を続け、17周目にライバルよりもやや遅れてピットインします。しかしタイヤ交換作業中に外した左フロントのホイールナットに不具合があった為、スペアカーから外して付け直す(※)などの作業行って約35秒もの時間を要し、13位にまで後退します。しかしその後再び小雨が降り出すなどトリッキーな状況の中を生き残り、20周目に12位、30周目までに4位にジャンプアップ、そして40周目には2位を走っていたマクラーレンのヨッヘン・マスがスピンして2位にまで浮上する猛チャージを見せます。この時点でトップを走っていたフェラーリのニキ・ラウダとの23秒もの大差も、ラウダがレックのデビッド・パーレイをラップする際にコースオフした事もあって僅か10周で追い付いてシケインの入口でパス、その後もラウダを1周2秒のペースで引き離したニルソンは、ボスのコーリン・チャップマンからのスローダウン指示を無視!して最終的にラウダに14秒もの大差を付けてチェッカーを受け、自身初、そして唯一の優勝を挙げました。
※ロータス78はグラウンドエフェクトを得る為にフロントのトレッドをレギュレーション限界まで広くしていました。この為にフロントホイールにスペーサーを使用しており、これに対応する特製のホイールナットが必要でした。Model Factory Hiro刊「Lotus 78,79&80」の22ページにこのスペーサーとホイールナットの写真が掲載されています。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー6は、右上のカギ部分が折れているタイプ
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は舟形タイプ、JPSストライプなし
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はメインエレメント上に記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成


【FILE 35. 1977 Rd.07 BELGIAN GP – June.3-5.1977】 v1.0
JPS17(78/3) Driver: Mario Andretti


参考資料:
・AutoSport 1977年8月1日号
・外部リンク >> 「A BOOKSHELF」
一方、アンドレッティのレースカーであるJPS17は、スペインGPから基本的に大きな変更は無くこのベルギーGPを戦います。しかしマーキングでは今回も更に変更を受けており、モナコでのPARK PALACE MONTE CARLOロゴが消えているのは当然ですが、更にフロントノーズと両サイドウィングのカーナンバーの書体共に変化が見られます。フロントノーズの書体はこれまでの物をベースにしながらも、今回は「5」のカギ部分の付け根が、モナコでは水平にカットされていたのが、斜めにカットされた物に変更されています。これまでも「6」との識別性を高める為の変更を幾度となく受けて来たフロントノーズのカーナンバーですが、これで基本的に一応の完成形となります。また両サイドウィングのカーナンバーはこれまでの物から一新され、「5」のカギ部分がこれまでの角張った形状から丸みを帯びた物となり、この書体もこれで完成形となって、翌1978年及び次のロータス79まで引き継がれる事になります。また、今回アンドレッティはニコルソン-マクラーレン・チューンのDFVを使用しています。
圧倒的な速さを発揮したスペインGPから、モナコGPでは精彩を欠いたものの、このベルギーGPではアンドレッティは再びその速さを取り戻し、初日午前のプラクティスではブラバムのジョン・ワトソンをコンマ4秒抑えてトップに立ちます。更に圧巻だったのは土曜日で、今度はワトソンに対して1.5秒もの大差を付けてポールポジションを獲得します。そのワトソンから更に1.5秒以内には予選17位になったシャドウのアラン・ジョーンズまでがひしめく混戦だった事から、アンドレッティの突出ぶりは更に目立ち、このアンドレッティの速さの理由を巡ってパドックで様々な憶測が飛び交う結果となりました。その内容はアンドレッティのドライビングか、サリスバリーのデフの効果か、ニコルソン-マクラーレンのエンジンか、グッドイヤーがアメリカ人であるアンドレッティにだけスペシャル・タイヤを与えているのではないか、といったものでした。一方この日49歳のバースデーパーティーの為にサーキットを留守にしていたボスのコーリン・チャップマンは日曜にサーキットに戻って来た時、その速さの最大の秘密であるグラウンドエフェクトをライバルに研究される事を警戒して神経質になっており、アンドレッティに「手の内を見せ過ぎるな」と厳しく注意したと言われています。
しかし日曜のレースが雨となった事でアンドレッティのシナリオが狂います。スタートで慎重になったアンドレッティはワトソンに先行され、半周も回らないシケインの入口でブレーキングをミスしてワトソンのリアに突っ込み、共にスピンしてリタイアとなりました。スタートに失敗すると勝負を焦って自滅するのは、この後もしばしば見られたアンドレッティの欠点で、この年タイトルを争えるマシンを手にしたアンドレッティは高い代償を払う事になります。もしこのレースで優勝出来ていればアンドレッティはシェクターやラウダと共にポイントリーダー争いに食い込む事が出来た筈でした。

<外観上の特徴>
・フロントノーズのカーナンバー5は、カギ部分の根元が斜めにカットされた形状に変更
・フロントウィングにガーニーフラップ追加
・フロントウィング翼端板は半月形タイプ
・サイドウィングのカーナンバー形状変更
・リアウィング上面のJohn Player Specialの文字はストライプの枠外、延長フラップに掛かって記入
・ニコルソン-マクラーレンのロゴは両バンク前下方のカムカバーに記入


<改訂履歴>
・v1.0(2011/11/22) 新規作成


ご意見、別考証・別見解など歓迎します。コメント欄をご利用ください。

– END –